泡沫の宵

泡沫の宵

影が差す　愛を灯した　この世界　君に染まりし　この恋衣

君の背と　暮相染まる　この今日が　哀だけ残し　彼方へ褪せる

細波や　縹煌めく　夜の海　消えぬ寂寞　憶那の夢

想愁に　膨らむ僕は　沈みゆく　淡くも深い　秘色の場所へ

君の影　思い初めるは　翠雨の日　夏に溶けゆく　泡沫夢幻

さようなら　独り呟く　夜さりかな　つたう雫は　月光藍花

短夜に　微かに響く　慟哭を　知らぬふりして　待宵が過ぐ

皮肉にも　水面に映る　月光が　君と同じく　惑溺させる

君がいた　面影探し　彼方此方と　未だ彷徨う　可惜夜の街

光る帆を　携え進む　月の船　岸辺へ誘い　夢が覚めゆく