第36話 再来


「――ねぇ。ニファ……そもそも何で、アルベール領に行かなければならないの?」


 ?


 いつもは察しの良いお母様が奇妙なことを言った。


「それは、未来でアルベール領の特産品が葡萄酒からローズマリーのハーブティーに変わっていたので……」


 ……あれ。そういえば何で未来のアルベール領の特産品が変わったというだけで私はそれが国の滅亡につながると思ったのかしら…


「……?わかりません……」


 本当に何故、私はアルベール領に行こうとした?


全くもって違和感を持っていなかった。それが必然であるような気がして……


 何かがおかしい…

そのとっかかりに気づいた瞬間私は真っ白な世界に1人で立っていた。

先程まで目の前にいた両親もいなくなっている。


どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「やぁ、ニフェル。久しぶりだな。」


 …何故ここにいるのか。


「お久しぶりって…ロード様にお会いして2ヶ月半しかまだ立っていないですよ?…力を使いすぎてしばらくは動けないと言っていたのに…」


 15年動けないと言っていた口はどこへ行ったのか…


 おちゃらけた声で神は言った。

「はははは、思っていたより早く神力なるものの回復が早くてな… それもこれも、全部お前の力だ。」


「…、私がやってきたことと、神力の回復と何か関係があるのですか?」


 あのキース・トラフィズの後ろについていたであろう黒幕・フィルスフィアはあの領地・および侯爵の陥落に力を注いでいたということだろうか。そうでもないとあのような馬鹿キース・トラフィズを使う意味がない。


「そうだな…話すととてもややこしいんだが、私のこの神力というのは、今、そして現時点での未来からの神への信仰心から生まれるものなんだ。…たとえば、お前がトラフィズ領の違和感に気づいていなかった場合…トラフィズ領がフィルスフィアと繋がっていることに気づくのが遅くなってしまっていたら、トラフィズ領の洗脳されてしまった民たちは偶像フェールしか信仰しなくなり、帝国の貴族もまた、父親を殺して侯爵となったキース・トラフィズによってフェール教を信仰するようになり私への信仰心が減っていく。私がお前にあった時点ではそんな信仰心がどんどん減っていく未来でしかなかったためにその時は私は力がなかった…しかし私の想定以上にお前が私の信仰心を取り戻してくれた。」


なるほど、信仰心が神力へと変換されるのか、どういう割合でどう変換されるのか少し興味があったものの神はまた話を続ける。


「大体プラス4分の1くらい、以前より神力が増えたのでそれを使ってお前に感謝と一つ、アドバイスをしておいてやろうと思ってな。」

「アドバイス…ですか?」

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