第2話 俺って、ゴブリン相手とはいえ忌避感なく殺れちゃうんだね

 一瞬、目の前が真っ暗になったと思った次には俺は建物の中にいた。

 レンガで上下左右を塞がれた道が前後に続く。人工物なんだよね明らかに。レンガの隙間からは青白い光が微発光しており、薄くらいくらいの雰囲気だ。

 女の子が好きなカラオケの明るさくらいで、視界に困らないもののそんな明るくはないが。

 まあなんていうか、THEダンジョンって感じの様相だ。



 俺はここに着くまでに収集したネットの情報を下にこれからのプランを即興で練る。

 曰く、ここではモンスターが出るのだと。でも出てくるモンスターはそんなに強くなさそう。


 興味本位で入った人がまとめた情報によると、

 1.扉に触れるとモンスターが居る『ダンジョン』に転移する。投稿者はゴブリンと遭遇したらしい。

 2.ゴブリンは好戦的で見つかったときに襲いかかられたが、勢いこそ強いものの膂力が小中学生くらいしかないので勝てた。

 ただ、他の人の投稿なども総合して考えると、牙による攻撃は攻撃力が強いらしいので気を付けたほうがよさげ。

 3.モンスターは倒すと光になって消え、その場に謎のコインが残っていた。

 4.初めてモンスターを倒したときに天の声が聞こえ、【覚醒】したらしい。

 5.覚醒することで『メニュー』を開けるようになり、そこから任意で帰還することができた。


 と。よくもまあこの短時間でここまでまとめれるもんだよね。

 どこまでが本当かわからないけど、1は事実なのは確認できた。

 なんでかわからないけど、ここに来てからスマホの電源がつかなくなっちゃったので追加の情報は期待できない。

 んま、こういう面白そうな話は先駆者になりたいので頑張りますかあ。


 ――ギャギャ


「わーゴブリンだ、本物初めてみたあ」

 そうして俺は人生で初めてのモンスターと遭遇する。

 肌は緑だけど、小柄だなあ。俺のおヘソくらいしかない。目の血走り方が飢えた獣って感じだね。あと臭そう。


 ダンジョンに入った人間の評価に基づくと、多分危険度で言えば中くらいかな。

 危険度低だとスライムとかで危険度高がオオカミとかっぽい。


 そんなことを考えていると飛びかかってきたのでヒラリとかわす。

 ニートの動きは鈍いと思った? うん鈍いよ。多分。

 ただゴブリンの動きが単調すぎるのと、スピードもそんな早くない。

 かわされても動じないゴブリンは身を翻してもう一度突進し、飛びついてくる。

 攻撃の仕方を見るに噛みつきが主体なのかな。牙はギザギザしてるし、確かに噛まれたら痛そう。


 事前情報の通り噛みつきは警戒していたので対処は容易い。


 俺はもう一度かわし、すれ違い様に拳を振り下ろす。

 空中でうつ伏せのようになっていたゴブリンの背中にヒットしたことで、ゴブリンは地面に叩きつけられる。

 そして俺は即座に組み敷き、メイン武器と思われる牙での攻撃を防ぐのも含めて首を押さえつける。

 暴れているがそこは力の差が明確にあるようで、ゴブリンの抵抗は虚しくもあまり意味がない。


「一応人型だから忌避感とかあるのかなと思ったけど、そんなにだね。

 まあ殺意ビンビンで向かって来たの君だし、殺さないと俺帰れないし、仕方ないよね。あと見た目キモいし」

 そんな独り言を呟きながら呼吸を封じられ、徐々に弱っていくゴブリンを眺める。



 しばらくすると手の感触が消え、ゴブリンが光となって消えた。


『レベルが上がりました』

『レベル1達成ボーナスが支給されます』

『メニューへアクセスできるようになりました。以降メニューと唱えることでメニュー画面を開けます』


 うーん、めちゃくちゃゲームだなあ。

 俺はゴブリンが残したコインを拾い上げ、ポケットに入れながら「メニュー」と唱える。



 ・[ステータス]

 ・[ダンジョンショップ]

 ・[帰還する]


 帰還してもいいが、なんとなくまだ早い気がしてので俺はステータスの項目を選択する。


【名前】世波せなめぐる

【レベル】1

『HP』21/21

『MP』22/22

『筋力』12

『頑強』9

『知力』9

『精神』13

『敏捷』12

『器用』14

『運』28


[ステータスポイント]『5』

[スキルポイント]『1』

【スキル】なし



 おー、なんか自分の能力値が数値で表されるのって面白いね。

 どうやらポイントはステータスを任意に割り振ったりスキルを手に入れたりができるっぽい。

 でもHPとMP、そして運には振れないようだ。

 ステータスポイントの項目を選んだときの割り振り画面でHPとMP、運の項目がない。


 俺はひとまず筋力に2ポイント、敏捷に2ポイント、そして知力が低いのが癪だったので1ポイントは知力に振っておく。


 一瞬、身体中が光に包まれる。

 それはすぐに収まったが、漲るような感覚が残っている。


 おー、俺ってばこの一瞬で強くなっちゃった?


 次はスキルの確認だね。


 ―――――――――――

【取得可能スキル】

『剛力』『素手時ダメージ上昇』『幸運』『異世界ダンジョンゲート』

 ―――――――――――


 ふーむ、効果の確認は......出来ないのか。

 俺のゲーマー知識的な予想だと、『剛力』は筋力ステータスに補正、『素手時ダメージ上昇』は読んで字のごとくで、『幸運』は運ステータスに補正とかかな。

 基本的にスキル名から効果は予測しやすい。


 だけど、異世界ダンジョンゲートってやつだけよくわからないな。そもそもここがその異世界ダンジョンってやつじゃないのか?

 ゴブリンなんて存在はどう考えても異世界チックだろ。

 筋力を上げるのは安定択だよな。力こそパワーだし。


「んー、、よし!!」

 俺は少し迷ったが、そこは好奇心に弱い俺である。なんとなく効果を予測できるスキルより、気になったスキルを選択した。

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ダンジョンがあふれる現代ですが、俺の【異世界ダンジョン】は仕様が違うようなのですが? くちばしの子 @beak

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