2章 伯父 伯父ギャグ
間を作りながら、伯父は一気に話した。違和感と言われても、何を期待しているのか、何を伝えたいのか。伯父の悪行をつけを払わされた話にも聞こえるんだけど、私はどう反応すればいいのか分からなかった。
「相続について詳しくなくて、よくわかりません。」
違和感があるのは伯父の存在と、この話そのものと、なぜ俺に聞かせるのか、という点であることは間違いない。伯父の言う「事実」が、どこまで真実なのか、私には判断できなかった。
「不信感満載だな。当たり前だな。怠け者の悪人伯父さんからの話だからな。しかし、これが俺から見た事実だ。」
「その頃正彦は給料・年金に家賃収入に退職金で羽振りが良かったんじゃないか?旅行行ったり、自分でもできる申告を税理士に任せたり。」
心当たりがありすぎるのだが。父が税理士に全てを任せているのは知っていた。見てきたように言う伯父の言葉に薄ら寒いものを感じた。しかし実家の経済状況が、私が思っていたものとは違うのではないか、という疑念が頭をもたげる。
「数年経つと弟も気が付く。資金が心もとない、と。三軒アパートの修繕費用もかかり出したころかもしれない。空き部屋がすぐに埋まらなくなっていたかもしれない。今は二部屋空いてるな。」
それは今日見てちょっと気になっている。しかしそれほど深刻な話なのだろうか。ことさら問題を大きく見せようとしているようにも思えた。
「元々は遺産でただで手に入れローンも無い、自宅の住宅ローンも相続で完済出来たはずだ。多少の入金があればそれで…と思ってしまう。そしてずるずると先に延ばす。そこに一度上げたレベルとプライドはそうそう下げられない。玄関を出れば最大の金食い装置が目の前にある。増えないどころか減る残高。頼んでないのに年は取る。俺の仕掛けた意地悪「売らないのか?俺が買おうか?」が突き刺さる。このストレス、43じゃわかならないか。」
しかし、それでも何が言いたいのかはさっぱりわからない。遺産をよこせ、とでも言うのだろうか。父が抱えていたであろう苦悩は理解できる。しかし、それがなぜ伯父の口から、私に、今、こんなにも生々しく語られているのか。その意図が見えないことが、私を最も混乱させた。
「『覚悟がいるぞ』と言ったよな。多分正解は、実家もアパートも三十年前に売るべきだったんだ。だからすぐ売れ。」伯父は畳みかけるように続けた。「元々あの敷地に三部屋は無理があるんだ。二部屋に建て替えるべきだったんだ。しかし目先の金に飛びついた。結果捨て値で売るしかない。今はもう。俺は助けないし買わない。」
「本当はここに正彦がいて、正彦に言うべきだったんだろう。どうせ聞き入れはしなかったろうがそれでも言うべきだった…なのに今、それをしているのは結局、底意地が悪い悪者なんだろうな俺は」
伯父は何を言っているんだ?アパートがまずい状態だとは思う。しかし直ぐに、しかも捨て値で手放さなきゃいけないとはどういうことだ?父がそんな判断ミスをしたというのか?伯父の言葉は、あまりにも一方的で、父を愚弄しているように聞こえた。
「いきなりこれだけ聞かされてもという顔だな。」「ひとつ三部屋の理由だけは教えてやる。爺さん婆さんの子供は三人いたんだ」
だからどうした。何をどう答えれば良いのか。そんなもの判るわけがない。父の過去、伯父の過去、そして複雑な不動産の話。私の頭はすでに情報過多で、思考が停止していた。早くこの場を離れたかった。
「爺婆は3人の子供が将来困っても喧嘩しないように、3部屋アパートにしたんだよ。親なりに子を守ろうとしたんだな」
父が独占と聞いた後にそれを聞かせる。その意図は何だ。不愉快極まりない。
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