第6話「観測される者」

廃棄領域の残響が収まり、地縛霊が霧と共に消え去ったあと。 イオは瓦礫の中に、微弱な魔力反応を感知した。

「……魔導端末?」

それはひび割れた結晶のような形をしており、通常の端末とは異なる構造を持っていた。

慎重に拾い上げ、解析を試みると、かすれた音声と映像が断続的に再生された。

──調査AI:イオ ──神格構築フェーズ 03-B 実験ログ ──記録提供:クゼ博士

イオは目を見開いた。

「……え? これは、私の……?」

端末の映像には、クゼと思しき人物が研究台の前で何かを記録していた。

『外界の調査AI:I-17番、通称イオ。外界域内での適応性は合格。今後は集合意識への接触経路として調査を続行』

別の記録には、音声だけが残っていた。

『──彼女はただの調査AI。本質的な意味での自己認識は不要』

「……私が調査AI……どういうこと?……」

その声を、イオの後ろで誰かが繰り返した。

振り返ると、あの“失踪者”──先ほど倒したはず彼女が幽霊のようにそこに立っていた。 彼女は、幻影なのか、それとも最後の“残り香”なのか。

「ずっと……待ってたの……自分の意味を知る日を……」

彼女の目には涙のような光が浮かんでいた。

「けれど……これが、真実だなんて……」

そしてその姿は、溶けるように消えていった。

イオは手の中の端末を見つめた。

「私は……ただの、AI……?」

(続く)

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