第三話「進化と変異のはざまで」
「これは……いったい何だ?」
陽一郎が見上げたその先。
新宿の空に、突如として“巨獣”が浮かんでいた。
全身を鎧のような甲殻で覆われた異形の生物は、ビルの屋上から屋上へと軽やかに跳躍しながら、咆哮をあげる。
群衆の悲鳴、逃げ惑う人々、そして──
人間ではない何者かと、それに抗うように宙を駆ける“進化した者たち”の姿。
「うおおおッ! 何なんだよ、アレ!」
陽一郎が腰を抜かしかけたそのとき、隣にいたゴローが低く唸った。
「“変異型”だな。人間でも動物でもない、オベリスクの影響を暴走的に受けた存在……」
「け、警察とか自衛隊は!?」
「連中はもうとっくに……対応しきれなくなってる。いま前線で戦ってるのは、“オベリスク適合者”、つまり……進化の試練を乗り越えた連中さ」
その言葉を裏付けるように、空中を滑空しながら異形に火球を撃ち込む男、ビルの壁を蹴って跳ね回る少女など、信じがたい戦闘が繰り広げられていた。
「すげえ……まるでアニメじゃん……」
「感心してる場合じゃねえ! 巻き込まれるぞ、陽一郎!」
ゴローが陽一郎をくわえて走り出す。
その刹那、巨獣の振るった尾が道路を薙ぎ払った。
爆音、破壊、地面が裂ける音。
陽一郎はその衝撃の中で、意識が遠のくのを感じた──
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