街へ向かうふたり (改)

「セリフ。」 。を削除しました。 内容は変わりません。


 メルティアが人間じゃないって信じられないけど、確かに体温は低かったし、魔石を飴玉みたいにコロコロ転がしてしゃぶっていた。

何でも、魔石は戦闘エネルギーになるんだって言ってたけど、どんな原理だろう?

でも、どう考えてもメルティアの身体が人工物とは考えられないんだけどなぁ?


どっちに行こうか?って聞いたら、「ちょっと見てきますわ」と言ってほんの少しジャンプした風だったのに、途中から光って更に空高く飛び上がってしまった。


「あ、反対方向に街が見えますわよ?」


助けてもらった時と違って、今回はふわりと降り立ったけど、スカートが裾からめくれたように見えたのは内緒だね。僕は脳内の変な気持ちを抑えるので精一杯だった。

 

****


わたくし、屋上戦隊が浴場戦隊でなくて少しホッとしましたの。

どちらへ行こうかとお悩みでしたので、気を利かせて少し跳び上がって周囲を見渡しましたわ。ここからでも、あの青い小柄な……いえ、結真くんはよく目立ちますわ。

全身青色は少し目立ちすぎですね?これは考えなくては……良い標的にされてしまいますわ……。


ゆっくり降りて来ましたら、裾がめくれ上がったのでそっと手を添えましたわ。乙女として、当然の振る舞いですわね。


刺激が強すぎたかしら?今度はお顔が赤いですわ。照れてる結真くんは可愛いですわ。


****


街までもう少しというところで、「見かけねぇ奴らだな?どこへ行こうってんだ?」バラバラと如何にも危ない人っぽい奴らが現れ囲まれた。

かなり手馴れると思える。動きがスムーズなのだ。


「なんだ?この青い奴ぁ?」

「こっちの別嬪さんはいいねぇ、夜のお相手も頼みてぇ~ぜ」

「ちげえねぇ」

「げへへへ」


何て世界だろう?魔物だけでも厄介なのに、こんな無法者まで湧いて来るなんて。


****


僕はメルティアを庇いながら前へ出た。


「乙女を護るは屋上戦隊スカイハイナンジャーがひとり」


足を踏み鳴らして、無法者を指でなぞって、左手を胸に持って来る、そして右手は天を指す。


「カエルムブルーが役目・ここに見参!」


バイトで鍛えた見栄を張る、戦隊お約束の演出だけど、覚えるの苦労したんだなぁ。


ぱちぱちぱち♪隣でメルティアが満面の笑みで本気の拍手をしている。


(やって良かった~報われたぁ)


 ――そうして。1ラウンドも経たないうちにボコられた――


****


リーダー格と思わしき、黒髭ガイナンが嘯く。

「さぁ別嬪さんはこっちへ来な。こんなへっぽこ野郎にはもったいねぇ」


今度は、メルティアが僕を庇って前へ出た。

「結真くんが、バイトとやらで鍛えた技を披露する前に倒してしまうなんて失礼ですわよ?」


長槍ソウケツが、槍で結真を指しながら嘲る。

「けっ、なまちょろい、そいつがわりぃんだよぉ」


メルティアは淡々と言い放つ。

「わたくしがわざわざ救った命をあなた方は、なんともお思いになりませんの?」


「しゃらくせぇ!」怒声と共に”手斧のラズィ”が斧を振りかざして襲い掛かって来る。それに呼応して”魔戯(マギ)のビショト”は印を結んで「パラライズ」と、魔法を打ち込んで来た。


ラズィは、迎え撃とうとするメルティアを見てニヤリと笑みを浮かべると、片方の斧をメルティアへ向かって投げる、と同時に残った斧を振りかざして追撃をしてきた。

メルティアは、パラライズが自分に当たった感触は受けたが、その効果が出る事は無かった。

ビショットは、「なぜ!?」と呟く。己の魔法が効かなかった。そのことに、少なからずの動揺を隠せなかったのだ。


メルティアは迫り来る斧と、その影に隠れるようにして追撃してくるラズィを視界に捉えると、一瞬のうちに斧を避け、ラズィに迫る。

メルティアの余りに早い一連の行動に、ラズィは「ヒィ!」と短く悲鳴をあげた。

メルティアはラズィの無茶な打ち込みをかわすと、その腕を掴むと同時に、力任せに動揺の解けないビショットに投げつけた。

「ドォオン」鈍い音と共に倒れ込んだ二人は、ピクリともしなかった。


ソウケツが、隙ありとメルティアの背後から襲い掛かるも、後ろに目が有るかのように最短のステップで穂先をかわすと、メルティアのカウンターの肘打ちがソウケツの顔面に入って、ソウケツもまた気を失った。


それは黒ひげ男ガイナンが、「気を付けろ、そいつただの小娘じゃねぇ!」と、ソウケツに警告するのとほぼ同時の出来事だった。


そして間を置かず、メルティアがガイナンに迫る。何時の間に抜き放たれたのか?ガイナンの首筋には剣が突き付けられていた。


「わ、悪かった。た、助けてくれぇ。ほんの冗談なんだ・…・・」


初めの威勢はどこへやら……最後の方は声もしぼんでいって情けなく相手の情にすがってきた。


「あなたは、そう言って命乞いをした者たちを一度でも見逃すことはありましたの?」


ガイナンは言い淀んだ。


「……都合の良いことですわね?」


そう言い終わると、ガイナンのみぞおちにメルティアの拳が容赦なく打ち込まれた。


「メ、メルティア…・・・もしかして……」


僕が苦し気にそう尋ねると、メルティアは軽く首を振る。

どうやら命までは取っていないらしい。


__こんなの倒しても魔石は取れないですしね?正直、こういう事はしたくは無いですわ__


すべてが終わった時、メルティアはそっと結真の頭を抱えて膝枕でその勇気を讃えた。

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