第39話 居場所

 年明けの3学期が始まって早々、板敷さんから手紙を貰った。



 何だか、今は好きとかそういうのって考えられなくなった。

 いい友達でいよう…みたいな内容だった。



 まぁ、早い話がフラれた。ということである。


 あんまり悲しくはなかった。



 好き、とか嫌いとか、愛してる、愛してない、ではなかったのかもしれない。



 中1やし、友達以上、恋人未満みたいな、そんな感情だったのかもしれない。



 そして、春が来た。中学2年生になった。


 野球部には、ほとんど顔を出さなくなった。


 東原君こと、とーちゃんは家の都合で引越することになった。


 環境も少しずつ変わる中、もっぱら遊ぶ友達は竹之内(カッコ良くはない)こと、たけのーだった。


 たけのーが2年になって、よく遊ぶ友達ができた。松田こと、まっちゃんだ。


 まっちゃんは転校してきた子で、私もよく遊ぶようになった。


 家の裏に住んでいた長澤と、私は同じクラスになり、1年の時から一緒に登校していたこともあってかなり仲良くなった。

 ただ、長澤は真面目だったから必ず部活には行っていた。


 だから、学校が終わってから遊ぶのは、たけのー、まっちゃんのメンバーだった。


 私は、同じクラスになった、平井美樹さんのことを好きになった。



 恋多き男、雨夜優里の中2の恋が始まろうとしていた。

 懲りないやつです笑


 そして、中2、14歳にして人生の2つ目の分岐点を迎えることになります。


 平井美樹さんに想いを伝えるために手紙を書いた。


 ノートに2ページくらい書いた。



 内容は忘れたけど…。(笑)


 平井さんから手紙で返事をもらった。



「気持ちは凄く嬉しかった。ただ、まだ、好きとかそういうのが解らないからごめんなさい。

 お互いの事とか、よく知らんし、友達から…よろしく」



 みたいな内容だった。


 それから、めんと向かって話すのが苦手だった私は手紙で会話するようになった。



 ま、いわゆる文通みたいな。



 平井さんは、手紙を綺麗に折って渡してくれてた。

 三角形やらなんやら…。真似して折ったけど、私の折ったのは、なんやわけの解らないもんになってしまった


 平井さんは多分

「なんじゃこの不器用な折り方は。読もうとしたら破れそうやん」みたいに思っていたかもしれない。


 と、この頃から私は「普通」という名のレールからはみ出し始めていた。

 いや、それ以前に元々普通というレールには乗ってなかったのかもしれない。


 仲のよかった、まっちゃんと、たけのーと、よく煙草を吸うようになっていた。


 なんでか?


 未成年で煙草吸うのが恰好良く思えたからかな?


 よく近所の地水緑地公園(現在は深北緑地公園という)に行った。

 でっかい公園で当時はまだ、できたてでなんにもなかった公園だった。

 恐竜の大きな滑り台だけだったかな…


 煙草の吸い始めは、本数が多いとニコチンが回り過ぎて胃が気持ち悪くなり、吐き気を催す。

 吐いたら治るんだけど(笑)


 7月も終わりのことだった。

 もうすぐ夏休みだ!っていう時期だ(いきなり飛ぶなぁ)


 この日は、色んな小言を典子叔母さんから言われて、ムシャクシャしていたのか帰りたくなかった。


 いつものように、たけのー、まっちゃんと遊んでいたが、なんだかしっくりこない。

 でも、ひとりは嫌だった。


 私の居場所はどこなんだろうってこの当時よく考えるようになった。

 小学生の時から怒られる度に、明るいテレビや、ゲームの中を羨ましく思った。


 本当の家族もいないし、怒られて殴られて、世界で一番不幸なのは私だ。


 テレビの中ではみんな笑ってる。

 私に笑える場所なんてない…と思っていた


 典子叔母さんも感情的になり、

「お前の父ちゃんが亡くならなければお前なんか引き取ることもなかったのに。」

「お前のことでいつも夫婦喧嘩が始まる。」


 と、泣きながら私に言い放つ時もあった。


 私は、きっといない方がいいのかな?

 私は、ひとりで生きていかなきゃならないのかな?


 そんな風に考えていると、いつしか私はなけなしの金で電車に乗っていた。


 ひとりになろう

 ひとりになれば、そこが自分にとっての居場所だから…


 友達といる時は楽しいけど、自分の心のうちを知るものなど誰もいない…

 やっぱりどこか孤独だった

 孤独が自分の居場所なのかもしれない

 電車の中で私はそんなことを考えていた

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