第32章 靴型作り、そして色の運命は……

まずは靴型を作るために、段ボールを順番に切り始めた。マスキングテープを使って、それぞれの角度を調整しながら理想的な形を作っていく。




 余分な部分を切り落とし、デザイン通りにペンでラインを描いてから、マスキングテープを貼った場所を丁寧に剥がす。剥がした部分には、新たに切った段ボールを追加し、形を整えていく。




 不要な部分を取り除き、足りない部分を補っていく。この作業こそが、理想とする頑丈なブーツを作るためには不可欠だと思っている。




 次に定規を手に取り、かかとの高さを測って段ボールを再び切る。かかとの部分は少し高く、そして幅広く作ればきっと大丈夫だろう。




 靴の前側も同様に段ボールを切り取り、あらかじめ描いていた8つの靴ひも用の穴の位置に合わせて調整する。




 段ボールの作業が終わり、いよいよ革を靴型にぴったり合うように貼り付ける工程に入る。以前から使おうと決めていた牛革を取り出し、靴型の周囲を丁寧に覆っていく。




 内張り部分の上部をナイフで牛革に合わせて切り取る。余った革は後で再利用するためにまとめておく。




 続いて靴の上部と内張りの残り部分を縫い合わせていく。以前使った針と糸を使って一針一針丁寧に。経験がほとんどないにもかかわらず、レベル2のおかげか、手の動きはなぜかスムーズで、あまり苦労していない気がする。




 分かっている、靴職人として同じ工程を何度も繰り返すのは大変だ。でもこの繰り返しこそが、高品質な靴を生み出す唯一の道であり、顧客を満足させる手段なのだ。




 そして今は、作った牛革の表面を丁寧に磨き上げる時間だ。うん、落ち着いて慎重にやる。この工程、実は靴作りの中で一番好きかもしれない。




「見て見て、めっちゃニコニコしてる!」




 背後からベアトリクスの声が聞こえる。どうやら楽しんでいることがバレバレのようだ。




 磨きが終わったところで、靴はほぼ完成した。しかし、まだ仕上げの色塗りが残っている。最初は茶色にしようと考えていたけど、今となってはちょっと迷っている。




「ねぇ、どっちの色がいいと思う?」




 後ろを振り返って、メアリーとベアトリクスに尋ねる。チームとして、一緒に意見を出し合いたい。




「黒なんてどう?」




 ベアトリクスは微笑みながら答える。うん、彼女のゴシックな服装からして、黒が好きなのはわかってた。




 たしかに黒もアリかもな……そんな時、メアリーが顎に手を当て、考え込む。




「うーん、やっぱり茶色の方が合うかも」




 おお、メアリーがついに発言してくれた。




「なるほど……じゃあ、こうしよう! 紙の片面に“黒”、もう片面に“茶色”って書いて、それを投げて、出た方にしない?」




「いいね、それやろう!」




「楽しそう!」




 ふたりともノリノリだ。さっそく紙を取り出し、一方に“黒”、もう一方に“茶色”と書く。




「準備はいい?」




 立ち上がり、紙を高く投げる。




 なぜか、まるで競馬の結果を見守る観客のような気持ちになる。三人とも目を輝かせて、紙の落ちる先をじっと見つめる。




 紙は空中でひらひら舞いながら落ち、やがて地面に落ちる。




 三人でいっせいに駆け寄って結果を見る。




「あぁ、負けた……」




 ベアトリクスが唇を尖らせる。少し落ち込んでいるようだ。




 心の中では僕も、そしてメアリーも望んでいた“茶色”が勝った。




 よし、ついに色塗りの時間だ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

VRMMO 職人 靴職人 Pi San Out @gomatsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ