安倍(アベノ)又三郎
@naota57
第1話
その小学校は少しだけ高台に建てられていました。20段ほどの石造りの階段を登って通学した記憶があります。その正面にはブルーグレーの入口が見えます。その扉を開けると、木材の匂いとワニスの匂いが少しだけします。学校の匂いでした。
階段を降りて左手に三年坂、その先を道なりに歩いて行くと清水寺が見えて来ます。一方、右手に出て、次の通りを右に折れれば八坂の塔、八坂神社に向かいます。京都洛東観光の真っ只中に、その小学校はありました。
申し遅れましたが、私、衣笠です。又三郎の同級生になります。他に、今宮さんと船岡さん、2名の女生徒が加わります。安倍(アベノ)又三郎という少年がこの学校へ転校して来た頃から、この物語が始まります。そして摩訶不思議な出来事が一度ならず起こります。それを今から語らせて頂くわけですが、何分にも半世紀以上も前の話ですので、記憶が曖昧なところや茫洋な箇所が見受けられるかと思います。お許しください。
それはその年の初夏のことでした。
(今宮さん) 「先生、風吹いてます」
(先生) 「うむ、そのようだね。」
(船岡さん) 「風鈴激しゅう鳴ってます」
(先生) 「うむ、チリンチリン、リーン、
リーン、ちと激しいα波じゃ」
(衣笠) 「雲もあないに速う走って行く」
(先生) 「うむ、ビューン、ビューン」
(今宮さん) 「先生、あそこに誰か立ってま
す」
(先生) 「誰だい?」
(生徒全員) 「誰や?」
(黒い影) 「僕です。」
(黒い影) 「僕、安倍(アベノ)又三郎です。」
(to be continued)
安倍(アベノ)又三郎 @naota57
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