駆け落ち系配信者の俺と嫁

世乃中ヒロ

第1話 俺たちの生きる道 その一

「ねぇ! 私と駆け落ちしてっ!」

「…………は?」


 あれは人生最大の告白であり、出来事だった。

 忘れられるはずもない。

 あの衝撃たるや、この先も絶対に経験する事はないだろう。断言出来る。

 なにせ、初対面の女性に駆け落ちしてと言われたのだから。


 年上から同級生、年下まで。

 高橋隼人の経歴を知って、好きですと告げた女は数多くいた。

 その全てを隼人は丁寧に断った。

 彼女らが告白した高橋隼人は期間限定の存在。いつか溶けてなくなる氷像。

 隼人は彼女らが望む、レーサーとしての自分で居続ける気は全くなかったからである。


 貴方の腕を見込んで話があります。

 学校は違うが隼人と同級生である藤倉つばめにそう告げられた時、変わった誘い文句だな? そう思いながらも、また告白かと思い込んでいた隼人の予想をつばめは余裕で超越してきた。


 好きです。つき合って下さいではなく、その遥か斜め上をいくつばめの告白。言葉の鎚で思いっ切りぶん殴られて、頭が真っ白になった隼人に思い至れるはずもなかった。

 その短い一言が、思いもしなかった未来へ隼人を連れて行くきっかけとなる事を。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 眼前の交差点の信号が、黄色から赤へと変わった。

 停止線ちょうどでバイクを停め、支えの左足を地面に置いた。

 左手首のデジタル腕時計を見た。前回の休憩から二時間以上が経過している。

 いいかげん休憩でもするかな。

 隼人がそう思っていたら、


「隼人。そろそろどこかで休まない?」


 以心伝心。タンデムシートに座っているつばめの声が、インカムを経由して耳に届いた。


「俺もそうしようと思ってたところだ。近場でどこか休める場所はあるか?」

「ちょっと待って……ここを含めて、三つ先の信号を越えた左側にスーパーとかがあるよ」


 縁もゆかりもない土地であるにも関わらず地図を広げた様子がない、演歌歌手のような名前を命名されたつばめは、そらで道案内をする。


「オッケー。そこで夕飯の買い物と一休みしていこうぜ」


 つばめを心から信じている隼人は、疑念を挟まずに返事をした。


「うん」


 交差する道路の歩行者信号が点滅する。

 隼人は両手でハンドルバーを握った。

 やがて信号が青になった。


 この世で最も愛している女を背後に乗せているのだ。

 事故は絶対に起こせない。


 東京や大阪に比べれば、交通量が圧倒的に少ない地方都市とはいえ油断は禁物だ。

 事故になってから後悔しても遅い。

 交差点の安全をしっかり確かめてから左足を離し、バイクを発進させた。


 つばめが言った通り、指定の交差点を通過した左側にスーパーマーケットや服屋。コインランドリーなどが店を構える商業区画があった。


「スーパーの前で良いか?」

「良いよ」

「了解」


 平日の午後四時過ぎ。

 店舗に近いスペースは、それなりに車で埋まっている。

 スーパーの建屋からほど近い場所で、前後に隣り合わせのニ台分が空いているのを見つけた。


 二人が乗っているバイクは、海外メーカー製の1300ccのアドベンチャー。

 右折で進入し、奥の枠内に駐車する。


 スマートキーで鍵を掛けた隼人は、そのままウェストバッグの所定の位置に鍵を入れた。

 黒いフルフェイスヘルメットを脱いだところで、息を軽く吐く。

 脱いだヘルメットは、後づけのヘルメットホルダーに掛けた。


「運転ありがとうね」


 先にバイクを降りていたつばめが左側から、少し疲れたような表情で感謝の言葉を口にする。


 赤いジェットヘルメットを左脇に抱えていて、赤や黒、白などで彩色された女性用のライダースーツを着用。


 髪型はバイク女子の定番の一つシニヨンで、首の後ろで纏められている。色は黒。

 左右のこめかみ辺りから垂らした髪がニ本、あご下の辺りまで垂れていた。


 十九歳。ヘルメットを脱いで顕になったつばめの美貌に、下校途中と思しき男子高校生三人組が、飲料の自動販売機の辺りで硬直していた。

 まるで三人だけ時が止まってしまったかのように。


「こちらこそ、ナビありがとうな」


 つばめに謝意を伝えながら隼人は、バイクの左側に降りた。

 超絶美貌かつスタイルも整っているつばめだ。

 見惚れたとしても無理はないが……それでも、惚れた女だ!


 そう思いつつ威嚇の意味で隼人は、同世代である高校生三人を一瞥する。

 バイクのスタンドを掛けながら。


「こらこら。そんな事しなくても、私は隼人以外の男にはなびかないよ」


 夫がオス化している様を見ていた妻が、少し困ったように口を開く。


 隼人とつばめは日本全国をバイクで巡りながら、各地の観光名所や名物料理などを紹介する旅系の動画を配信していた。

 つばめが顔出しで解説し、隼人が撮影と編集を担当している。


 動画配信者は、間違いなく人気商売だ。

 チャンネルに傷がつくような、あらぬ噂を立てられたくないのだろう。

 駆け落ちを冠している時点で無傷ではないような気もするが、そこは言わぬが花である。


 他に類を見ない、駆け落ち系という名乗りが功を奏したのか? 

 チャンネル登録者数は三ヶ月ほど前に十万人を突破。勢いは留まることなく、更に増え続けている。

 視聴回数も、登録者数の倍以上を毎回叩き出している。


 好意的に応援してくれる人の方が圧倒的に多い中で、アンチコメントばかり送って来る視聴者もいる。

 だがそれは、どんなチャンネルでも多かれ少なかれある事だろう。


 賛否はともかくそのおかげで、根無し草生活であるにも関わらず、金銭面においては何不自由ない放浪生活を送れているのだから。


「それより夕飯は何にしようか?」


 バイクは四輪車と違い、運転姿勢をほとんど変えられない。

 同じ姿勢を保っていれば当然、体は凝り固まる。


 それをほぐすべく、組んだ両手の平を真っ直ぐ前に突きだすストレッチをしながらつばめは問うた。

 確かに今は夕飯の内容を考える時だ。

 隼人は思考を切り替える。


「そうだな……米はレトルトがあるから。おかずはパスタにでもするか?」


 隼人も同じく、首を時計回りに一回転しながら考え、答える。

 今日はテント泊の予定でいる。調理と片づけのしやすさを考慮して決めた。


「良いね」

「ソースはつばめが好きに選んでくれ」

「だったら、カルボナーラが食べたいな」

「良いな。それでいこう」

「あー。……食べ物の話してたら、なんか小腹が空いちゃった」

「……じゃあ、パンとか軽いものでもここで食っていくか。」


 つばめの気持ちも理解できる。

 今日は移動だけの一日だった。通算すると、六時間近くバイクを走らせていることになる。

 夕食にはまだ早いが、さりとて腹を軽く満たしたいという欲もあった。


「大賛成」

「トイレは大丈夫か?」

「私は大丈夫だよ。隼人が先に行ってきてもいいよ」

「……なら行って来る。何かあったらすぐにブザーを鳴らすんだぞ」

「分かっているよ。行ってらっしゃい」


 隼人は薄手の手袋を脱いだ。

 ハンドルの左右に手袋を掛けながら、周囲に不審な行動を取る者がいないかを確かめた。


 つばめと別れた隼人は、ライダースーツのまま店内に入り、トイレへと向かった。

 二人は日々を、尾行に注意して過ごしている。


 連中の目的はつばめだけだが、恋人を渡す気が隼人にはないように、連中も諦める気はないようだ。


 大事な人を守るためにも、バイクの状態は常に良好でなければならないし、二人が不在の間に発信器をつけられるなどあってはならない。

 その為の見張りだが、短時間であってもつばめを一人きりにするのが心配になる。


 つばめには防犯ブザーを渡してあるし、護身術も指導している。

 それでも心配なものは心配だ。

 家を持たない生活が始まって一年以上。

 落ち着いた気持ちでトイレを済ませることは格段に減った。

 今回も早々に用を済ませ、早足で隼人は戻る。


 外に出た隼人はすぐにつばめの無事を確認した。

 安堵したところで赤地に白抜きの、たい焼きと書かれたのぼりが目に入る。


 のぼりを立てていたのは、横向きでスーパーの軒先に止まっているワンボックス車だった。

 駐車場から見えてはいたが、のぼりのほとんどが車体で隠れていたため、移動販売車である事までは分からなかった。


 これしかないと思った。

 買うのはつばめに話してからにしようと思い、やや急ぎ足で隼人はバイクの場所へ戻る。


「つばめ。スーパーの前でたい焼き売ってたぜ」


 えっ、と声を上げて振り向いた嫁の目は煌めいていた。


「それはもう買うしかないね。隼人は基本のあんこで良いよね。一つ?」

「あんこ一つで頼む」

「りょーかい。あ、でも買い物を終わらせてからで良い? どうせなら温かいやつを食べたいし」


 温かいものは温かい内に食べる。それに異存はなかった。

 良いぜと言いながら隼人は頷く。


「他に欲しい物はある?」

「……それなら眠気覚ましのガムを頼む。そろそろなくなりそうだったし。他にはないな」

「うん、分かった。じゃあ行ってくるね」


 甘い物が食べられる。

 そう笑顔で言い残しつばめは、上機嫌でスーパーへ向かった。


 最愛の女を使い走りにしているようで気が引けるものの、つばめには少しでも安全な場所にいてもらいたい。

 そう考えると、買い出しの時はこうするしかなかった。


 夕食前のスーパーの店内。客が大勢いるのはここからでも分かる。

 あの中では奴らも強行手段には出れないだろう。

 今のつばめは安泰という事で隼人は、バイクの警備に主眼を置いた。


 奴らの手先以外に、車上狙いという忌むべき輩もいる。

 駐車場の全方位をそれとなく見渡す。

 その最中、五十メートルほど離れた場所に駐車している、一台の白い軽自動車が目に入った。


 気になったのは軽自動車そのものではない。運転席と助手席に乗っている、男二人組の行動が隼人の目に留まったのだ。


 先ほどつばめに見惚れていた、思春期男子三人衆とは明らかに違う目的でこちらを見ていた。


 例えるなら、狩りの獲物を見ているかのような目をしていた。

 それを証明するかの如く、隼人と目が合った瞬間に二人はあからさまに目を反らした。

 怪しい事この上ない。


 隼人の父親は現役の警察官。

 不審者かどうかは、向こうが勝手に行動で示してくれる。やっこさんをよく見て判断しろ。大事な人を守りたいのならな。


 それまでの全てを捨て、今の生活を始めるに当たって、隼人は父親からそう教わっていた。


 その理屈に従えば、連中の反応はクロ。

 もたつくほどに、仲間を呼ばれるなどして、状況が悪化すると考えねばならない。

 スマホを取り出すと隼人は、つばめの番号にワンコールだけ電話を掛けた。

 意味はすぐに戻って来いである。


 バイクに跨がりエンジンを掛ける。ギアをニュートラルに。インカムとヘルメットの着用を進めつつ、嫁が戻ってくるのを待った。

 一分もしない内につばめは、見るからに不機嫌な顔で戻ってきた。


「たい焼きが……隼人と一緒に食べるたい焼きが……」


 食い物の恨み。つばめは涙目の表情で怒りに震えていた。

 恨み節を呟きつつインカムを装着。ヘルメットを被り顎ひもを取りつけると、慣れた動作で左側からシートに跨がった。

 その間、隼人は目をつむり、深呼吸を意識して繰り返した。


 隼人にも怒りの感情は湧いていた。

 二人きりの時間を邪魔されたのだから当然だ。

 だが、怒りでハンドルを握り、無理をした事で事故を起こす。それこそが最悪の事態である。

 隼人は自身の感情をなだめた。


「その怒り。あいつらにぶつけてやれ」

「分かってる! 絶対にぎゃふんと言わせないと気が済まないよ。出して!」


 嫁の言葉を受けてバイクを発進させる。

 頭に来てはいるものの、感情に飲まれていないようで安心した。


 公道の手前、止まれの表示で停止。ミラーを確認すると、例の軽自動車が後ろについてくるのが見えた。

 つばめをつけ狙う連中の手先で間違いない。


 感情を押し殺しつつ前方に向き直り、安全に合流出来るのを確認。スロットルレバーを捻り、ハンドルを左に傾けた。


 隼人はバイクに、ナビの為のスマホホルダーをつけていない。

 理由は必要ないからだ。


「どう進めば良い?」


 運転中のスマホなどの操作は違反というのもあるが、隼人がスマホのナビ機能を使わないのにはもう一つ理由がある。


「……次の交差点を右」


 まだまだ立腹しているようでつばめは、険のある声で行先を指示する。


「了解」


 隼人は素直に指示に従った。

 つばめの剣幕に恐れをなしているからではない。


 つばめは記憶術を競う大会で、日本一になった実力の持ち主だ。

 頭の中にインプットした地図を基につばめは指示を出している。


 本人曰く、一度見たら忘れないのだそうだ。

 それは最早、カメラアイ。瞬間記憶能力だろと隼人は考えているが、つばめは頑としてそれを認めようとはしない。

 あくまで記憶術と言い張っている。


 生体カーナビと言っても過言ではない。

 そんな彼女のナビに隼人は全幅の信頼を寄せていた。


「こんな作戦はどうかな?」


 一度も信号で止まらずに走っていた時だった。

 胸の空くような作戦を思いついたのだろう。

 意地の悪さがにじむ、嬉々とした声が聞こえてきた。


「どんな作戦だ?」

「次を右に曲がってしばらく走ったら、おあつらえ向きな山道があるんだけど……」


 説明に耳を傾けながら、右の方向指示器を出し、安全第一で交差点を右折する。


「……場所を選べば法的にも問題はない。技術的にも問題なしだ。乗った」

「そう言ってくれると思ってた。次を真っ直ぐね」


 指示通りに走っていると建物は減り、山との距離が近くなっていく。


「そこ! 突き当たりを右に行って。そしたら細い山道になるよ」


 ついてくるのは軽の一台のみ。

 仲間が来ているようには見えない。


「この先の交通量は少ないんだな?」

「うん。それは間違いないよ。それに、しばらく行き止まりにもならない」


 1300㏄のバイクは山道を軽々と登って行く。

 軽自動車同士であったとしても、離合に神経を使うほどの道幅だ。湧水が所々で流れている以外に舗装は乾いている。


「後は隼人に任せた」

「任せろ。奥へ行かない内に仕掛ける。準備しておけ」


 告げた次の瞬間、隼人は背中と腹に重みと力を感じた。

 つばめが隼人の背中に体を預け、両腕で抱きついてきたからだ。


 上り坂の道が曲がりくねる中、ほぼ平坦な直線に出た。

 対向車もなく、後続は軽のみ。路面も乾いている。この道幅ならギリギリではあるが、曲がりきれると隼人は判断した。

 右ウィンカーを出し、徐行の速度まで落とした。目視で前後の安全を確認する。


 隼人は現役時代、世代別のバイクレースで、日本一になった実力の持ち主である。

 街中であっても、本気を出せば素人の運転くらい簡単に引き離せるが、もちろんつばめを後ろに乗せている状態でそんな事は絶対に出来ない。


「三、二、一」


 隼人のカウントがゼロになった。

 エンジンが唸りをあげる。

 車体を右に傾け、右脚を伸ばして急旋回する。

 四輪車では真似が出来ない、小道路転回と呼ばれるテクニック。


 一瞬で百八十度向きを変え、追ってきた軽の右横を通過する。

 すれ違いざまに見た、完全に出し抜かれた、男二人の口惜しそうな表情が痛快だった。

 一気に溜飲が下がる中、


「べーだっ!」


 食べ物の恨みを晴らすべく発せられたつばめの声が、インカムを介さずに聞こえて来た。

 舌出しをしている顔を想像した。

 隼人は運転中に極力心を乱さないようにしているが、これには思わず喉を鳴らして笑ってしまう。


 つばめがどのような環境で育てられてきたのか。庶民の家庭に生まれた隼人には分からない。


 これまでの人生の中で奪われたもの。

 あるいは最初から手に入れられなかったもの。

 藤倉家という名家の鳥籠から解き放たれたつばめは今、それらを懸命に取り戻そうとしている。

 そう思えてならない。


 つばめの生き方を心から応援したいし、その邪魔はさせない。

 隼人がつばめの隣にいる理由の一つだ。


 軽自動車であっても、この道幅で転回しようとすれば、何度も切り返しをする羽目になる。


 一回でUターンが可能な場所を探そうと峠道を先に進んだところで、大きく水を空けられる事に変わりはない。


 その状態で、隼人の操縦技術とつばめの緻密なナビの前に敵う筈もなかった。

 本来ハンデをもらうべき者が逆に、ハンデを与えられるのだ。

 今回の件は完膚なきまでに、隼人とつばめの勝利に終わった。


「さすが隼人。あースッキリした」

「ざまあみやがれだ」


 隼人としても、せめてこれくらいは言っておかないと気がすまない。


 ミラーで後ろを確認する。軽自動車の姿は映っていない。

 先に進んだか。切り返しを選んだのかは分からない。山道を下るも、仲間と思しき車などとはすれ違わなかった。


「本当にそれ」

「それよりも、怖くなかったか?」

「怖いって、何が?」

「さっきの小道路転回だ。怖いって言うのなら、次は普通の転回にするが?」


 今回は小道路転回を選択したが、安全を優先するなら普通の転回が一番だ。


「怖い訳ないよ。だって日本一の隼人の運転だもん」

「元な……」


 レースの舞台を離れて一年以上経つ。

 一線を退いたとはいえ、素人に負けるつもりはない。けれど、現役の時と同じ技量を保っているとは思えない。


「……それで、今日はどうする? 連中と遭遇したんだ。予定していた近場のキャンプ場は使えなくなった。行きたい場所のリクエストはあるか?」


 敵と遭遇した近辺で一夜を明かす。

 そのような状況下で熟睡出来るほど、肝は座っていない。

 睡眠不足での運転は、事故に直結してしまう危険が高い。可能な限り、事故に繋がる要因は排除しなければならない。


「そうだね……最近ずっと日本海の方ばかりで撮ってたから、太平洋の方にも行きたいな」


 良いアイデアだと思った。

 ここから太平洋へ抜ける途上には、いくつもの地方都市がある。


「途中の街のホテルとかに泊まれば、一夜で見つけ出すのはかなり難しいはずだ」

「じゃあ、太平洋に決定!」


 つばめの機嫌は元通りになったようだ。

 声の調子で隼人は判断した。


 そこから二時間、二人は語り合いながら走った。

 休憩のため、見つけたコンビニに立ち寄る。

 そして気がついた。


「ここでもたい焼き売ってるぜ」

「本当だ。これは意地でも食べるしかないね」

「だな」


 ようやく取り戻せた、二人のかけがえのない時間。

 どれだけ奪われようと、その分だけ取り返し続けてやる。

 改めて隼人は心に誓うのだった。

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