第3話 “Twins”

ミツハは焚き火の奥に揺れる影をじっと見つめていた。重厚な鎧を纏った一人の戦士が、一本角のミュータントの首を手にして現れ、それを無造作にミツハの方へ放り投げた。


騎士:

「これはお前の報酬だ。奴を倒したのは、紛れもなくお前だからな。」


ミツハ:

「ありがとう……でも、あなたは一体誰なの?」


騎士:

「俺か? 誰でもないさ。ただの通りすがりと思ってくれていい。」


ミツハ:

「でも、あなたは私を助けてくれた。報酬の半分くらい、受け取ってもいいと思う。」


騎士はしばし言葉を失い、目を伏せて黙り込んだ。


46階の空が白み始め、淡い朝の光が瓦礫の隙間から差し込んできた。


騎士:

「最近はな、ミュータントどもが昼夜問わず現れる。気を抜くなよ。」


ミツハ:

「改めて……本当にありがとう。」


その瞬間、地鳴りのような咆哮が建物全体を震わせた。二人は思わず顔を見合わせ、窓の方へそっと近づいた。


すると突如、一人の侍が窓を突き破って飛び込んできた。騎士は驚き、反射的に剣を構えたが、侍は空中で身体をひねり、その剣の上に足を乗せ、勢いよく騎士の顔面を蹴り飛ばし、彼を壁の向こうへ吹き飛ばした。


ミツハは即座に妖夢を抜刀し、高速で侍に斬りかかる。だが、巻き上がった砂塵の中から、もう一人の侍が現れ、彼女の斬撃を受け止めた。


ミツハはすぐに距離を取り、二人の侍を注視する。


二人とも、古の仮面をつけ、兜と鎧を纏い、まるで鏡写しのように酷似していた。しかし、一人は一振りの刀を持ち、もう一人は二刀を携えていた。


その存在感――並々ならぬ圧が空気を切り裂いていた。


その時、崩れた壁の向こうから騎士が再び現れ、武具を手にして双子の侍たちに突撃した。だが、双子は互いを押し合うようにして回避し、地を転がって鋭く反撃。前後から同時に斬りかかるが、騎士の鎧がかろうじてその一撃を防ぐ。だが、それも長くは保たない。


ミツハは状況の悪化を察知し、刀を鞘に納めて静かに構えを取った。


その刹那――


巨大な一本角のミュータントが、轟音と共に壁をぶち破って姿を現した。皆がその威容に目を奪われている中、ミュータントは地に転がる同族の斬られた首を目にし、咆哮を上げた。目が赤く染まり、怒りが爆発する。


それは倒されたミュータントの「母」であるかのようだった。


彼女は口から強酸性の唾液を双子の侍に向かって吐きかけた。侍たちはすんでのところで回避したが、ミュータントは空高く跳躍し、そのまま建物全体を押し潰すように着地した。


ミツハは必死に騎士を抱え、崩れゆく瓦礫の中から抜け出した。遠くで双子の侍たちはなおも巨大ミュータントと渡り合っていた。


その隙にミツハは静かにその場から離れようとする。だが、彼女の前に再び一人の侍が現れた。


先ほどの二人よりも遥かに重く、鋭く、圧倒的な「強さ」がその姿からにじみ出ていた。


ミツハの心に恐怖が湧き上がり、冷や汗が額を伝う。


新たに現れた侍は、静かに長刀を鞘から引き抜く。そして、怒り狂うミュータントに向かって飛び上がり、叫ぶ。


「侍の技――『飛月(ひづき)』!」


次の瞬間、閃光の如く抜き放たれた刀が、ミュータントの胴を真っ二つに断ち斬った。


空へと噴き上がる、毒のような酸性の血。その中で、双刀の侍が続く。


「侍の技――『千閃(せんせん)』!」


空から降り注ぐ血の雨を、無数の斬撃で弾き返しつつ、彼らは構えを解かなかった。


その間に、ミツハは騎士を背負い、地下都市へと続く秘密の通路を、全力で駆けていた――。

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The last knight @Dieyoungame

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