第2話”Mitsuha”

ミツハは、かつての第46階層にある廃墟の都市を任務遂行のためにさまよっていた。そこにはすでに冬の厳しい寒さが訪れており、吹雪と崩れた建物が広がっていた。しかし、それらよりも恐ろしいのは、希少な一角のミュータントの存在だった。


その獣は、熊のような巨大な体に馬の頭、そして鋭く尖った一本の角を持つ。力と速さの両方を兼ね備えており、人間の限界を超えている。格闘戦では時に互角に戦うことも可能だが、一瞬の隙を見せれば、その角に貫かれて命を落とすことも多い。


だが、ミツハにとってこれは新たな試練だった。彼女は数少ない女性のミュータントハンターの一人であり、決して弱い存在ではない。彼女には代々受け継がれてきた刀――「ヨウムイ」があった。この刀は、一万の刀鍛冶の技が結集されたとされ、どんな獣でも一太刀で斬り伏せる力を持つ。さらにミツハの秘技「ヒガンバナ」に基づいた、美しくも恐ろしい毒が込められている。この剣こそ、命を賭けた戦いにおける彼女の最大の頼みだった。


ついにミツハは一角獣の居場所を突き止めた。彼女は気配を殺して近づき、不意打ちを仕掛ける準備を整える。ゆっくりとヨウムイを鞘から抜き、一角獣の背後から襲いかかった。だが獣はすぐさま角で彼女の一撃を防いだ。ミツハは隙を逃さず、別の角度から再び攻撃したが、凍りついた皮膚には刀の刃も通らなかった。


彼女は刀を強く握り、頭部を狙って一気に斬りかかるが、一角獣は角で防御。しかしその角は一瞬で折れ、地面に落ちた。それは勝利への兆しだった。怒り狂った獣は、折れた角を拾い上げ、ものすごい力でミツハに投げつける。ミツハはなんとか避けたものの、衝撃で周囲の雪が舞い上がり、視界を奪った。


気づいたときにはすでに手遅れだった。獣は背後に回り込んでいた。ミツハが防御の体勢を取った瞬間、獣の巨大な爪が彼女の脇腹を強打し、建物の壁を突き破って吹き飛ばされた。ミツハは重傷を負い、咳き込みながら起き上がろうとするも、口から血を吐き、視界がかすむ。


その時、獣が静かに建物の中に入り、匂いを辿ってミツハを探す。ミツハは動けず、手探りで刀を探すが、その時すでに影が忍び寄っていた。獣は恐ろしい気配を放ちつつ近づき、彼女の目の前で荒く息をついた。そして爪を振り下ろそうとしたその瞬間、口と目から血を吹き出し、断末魔の叫びと共に倒れた。


それは、すでにミツハの斬撃によって角を失った際、毒が体内に入り込んでいたからだった。毒が活性化し、血が沸き立つようにして一角獣は凄まじい苦しみの末に絶命した。しかし、ミツハもまた傷の痛みに耐え切れず、意識を失って倒れた。


やがて彼女がゆっくりと目を開けたとき、焚き火のそばで目を覚ました。胸には伝統的な方法で包帯が巻かれ、傷は手当されていた。だが、焚き火の向こう側の闇の中に、重々しい気配を放つ一人の人物が見えた――。

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