ヘミングウェイ『キリマンジェロの雪』と豹

オカモト弁護士の法的考察

第129回

ヘミングウェイ『キリマンジェロの雪』と豹

                        岡本 馬路

※ネタばれ注意 本エッセイではヘミングウェイ『キリマンジェロの雪』1936年の小説・映画についてエンディングまでのネタばれがあります。ネタばれなしで愉しみたい方は、本エッセイを読み飛ばしください。


環境法:自然愛護の教訓

1 『キリマンジェロの雪』

『キリマンジェロの雪』はアーネスト・ヘミングウェイが1936年に発表した小説であり、1952年に映画化された。

冒頭にはキリマンジェロの山頂付近でみつかった豹の亡骸からはじまる。

アフリカのキリマンジャロ山は、別名「神の家(ンガジェガ)」ともよばれている。その頂近くに、不毛の頂上を目指し登り、力尽きて死んだ豹の亡骸があるという。豹が何を求めて頂上を目指したのか、知る者はない。


一見むなしくみえる努力の象徴として扱われる。1970年代の人気劇画梶原一騎・中城健『紅のチャレンジャー』でムエタイのチャンピオンを目指して結果再起不能となる主人公の運命を象徴するかのように冒頭に、キリマンジェロの豹のエピソードが登場する。


本筋では、アフリカで狩猟をしていた小説家ハリー・ストリートは、脚の壊疽で瀕死の状態にあった。救援を呼んだが間に合いそうもない。死を悟ったハリーは、看護する妻ヘレンの制止を振り切り自棄酒を始めた。ハリーは酔い、ヨーロッパ大陸の各所で過ごした日々を回想する。そして、多くの体験をしておきながら、著作家としてほとんど何も書き残していなかったことを後悔し、慰めるヘレンに八つ当たりをした。ハリーは眠りにつき、その夢の中で救援の飛行機に乗って光あふれる大空へと飛びたった。そして、飛行機はキリマンジャロを、「神の家」をめざす。


一方、ヘレンが目覚めたとき、そこには闇と、「ハリーだった」ただの物体と、あざ笑うようなハイエナの泣き声が残るのみだった。


結果は苦悩のみで文学作品としてはハリーはなにも残していない。

日本人がこの小説や映画を鑑賞した場合は無常観を感じるのではなかろうか。


2 『キリマンジェロの雪』的なむなしさが南アフリカのボツィファノ保護区の豹の保護についてしょうじてしまった。

  21世紀の段階では同保護区での豹は絶滅している。

 以前は狩猟が認められていたため、欧米からハンターがやってきて猛獣狩りをして地元をうるおしていた。地元の農民のとっては害獣であるが、ハンティングのガイドは大きな収入源となっていた。農作物よりも格段に大きな観光収入をもたらすものとして、ある程度許容されていた。

 ところが動物愛護団体が狩猟は残酷だと非難するようになり、毛皮やはく製の取引が禁止され、猛獣狩りツアーができなくなった。地元農民は害獣を徹底的に駆除するようになり、豹は絶滅してしまった。営利のために動物が無慈悲に殺される、という批判によって、当該動物は絶滅してしまった。

動物愛護が絶滅の原因となった。

愛護の方法をまちがった上『キリマンジェロの雪』が生じたわけである。

 現在はハンティングをある程度許容することが北米の自然公園などではおこなわれている。

 日本でもシカの害により、むやみな狩猟批判はなくなり、害獣駆除の必要は認識されてきた。動物愛護と狩猟は両立するのである。『キリマンジェロの雪』にならないようにしなければならない。


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