第91話『負けヒロインが多すぎる』とファミリーレストランでお金が足りない場合の犯罪性

オカモト弁護士の法的考察

第91回

『負けヒロインが多すぎる』とファミリーレストランでお金が足りない場合の犯罪性

                         岡本馬路

※ネタばれ注意 本エッセイには雨森たきび『負けヒロインが多すぎる』の文庫では1巻の冒頭、アニメでは1話冒頭の部分のネタばれがあります。ネタばれなして楽しみたい方は本エッセイを読み飛ばしください。




『負けヒロインが多すぎる!』(英題:Too Many LOSING Heroines!)は、雨森たきび先生による日本のライトノベル。イラストはいみぎむる先生。ガガガ文庫(小学館)にて2021年7月から刊行されている。略称は「マケイン」。第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作。セブンシーズ・エンターテインメントより本作の英語版が2024年8月から刊行されている。


2024年7月から9月までテレビアニメの第1期が放送された。2025年4月にテレビアニメの第2期製作が決定した。


自称「背景キャラ」の温水和彦は、ある日偶然クラスの人気女子・八奈見杏菜が同級生で幼馴染の男子生徒に振られている現場を目撃してしまう。それ以降、和彦は杏菜を含めた複数の負けヒロインたちと関わっていくこととなる。


八奈見杏菜は負けヒロインの一人。和彦のクラスメイトであり、容姿が良いことからクラスでも人気がある。明るく、愛嬌のある性格をしているが、少し抜けた一面もある。また、かなりの食いしん坊でもある。


1年生の夏休み前、八奈見杏菜は、ファミレス内で、自分が12年間好きだった幼馴染の袴田草介に対して、2カ月前に転校してきた姫宮華恋に想いを伝えるように促す。八奈見は、草介がファミレスを出てたことで、結果的に振られることぬいなる。草介は勘定をせずにでていったので八奈見は草介の感情も負担することになる。

傷心の八奈見は、草介の飲んでいたグラスのストローに口を付けてるが、その場面をクラスメイトの温水和彦に偶然目撃されたことに気付く。

持ち合わせの金もたりなくなっている。

和彦が金を貸そうとした後、和彦の前の席に移り、大泣きしながら和彦に愚痴を聞かせていたが、その間にさらにメニューを頼み続ける。

 結果的に和彦に全ての不足分の金額を立て替えてもらうこととなり、返済の代わりとして立替分の金額相当になるまでの弁当を彼に提供し続けるという契約を交わしたことで彼と交流することとなってういく。

 和彦がいなかったら、無銭飲食部分があったのであるが、この場合は八奈見に詐欺罪(刑法246条)等の犯罪は成立するのだろうか。

 無線飲食と詐欺というのは法学部やロースクールの刑法各論講義では全体で45時間のうち1時間くらいかけるところではある。

 ファミリーレストランにはいるときから無線飲食の故意があるわけではない。

草介が勘定せずに出ていくというアクシデントにより払えなくなったのであり、詐欺の故意はこの段階ではない。

 ただ、そのあと、和彦が金を貸してやるといったあとに、けっこうな量の追加注文をしている場合には、和彦の課す金額が確定していない以上、無線飲食の故意ありと認定される可能性はあった。この部分、1万円に届かないとはいけ、ファミリーレストランとしてはけっこう大きな金額である。また、14歳をこえているので刑事責任年齢にはなっている。

 実際はファミリーレストランの担当者か八奈見かが、両親か草介に連絡をとって支払をすませればいいのであるが、失恋したてでそこまで冷静な判断は期待しにくかったことであろう。

 和彦は刑事罰もありうるようなヒロインの窮地を救ったのである。

 ある程度姫を救う白馬の王子様に見えたのではあるまいか。ただ、小説とアニメではちょっとちがった印象を受ける。


 無銭飲食については、法学部等の論文式試験の場合は、客の注文ごとに詐欺罪の要件が微妙に満たさなくなるような事例設定をすることが多い。最初のときは財布の件で足りるが2回目からはたりなくなる、とか、クレジットカードの期限の切れたほうをもってきたことに途中から気づくとか、レジをすりぬけて脱走したとか、である。

 詐欺罪の構成要件を客観面・主観面とも条文から導くことができているか、それのあてはめができているかを採点者はみることになる。

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