第88話『社畜と少女の1800日』と少女におしかけられた成人は法的にどうすべきか
オカモト弁護士の法的考察
第88回
『社畜と少女の1800日』と少女におしかけられた成人は法的にどうすべきか
岡本馬路
※ネタばれ注意 本エッセイには板場広志『社畜と少女の1800日』の中盤までのネタばれがあります。ネタばれなしで楽しみたい方は、本エッセイを読み飛ばしください。
板場広志『社畜と少女の1800日』は日本の長編漫画。『週刊漫画TIMES』(芳文社)にて、2017年4月21日号から2020年10月2・9日合併号まで連載。その後にスピンオフ作品『社畜と少女のエトセトラ』が、同誌にて2021年1月22日号から2021年4月30日号まで連載。その後のストーリーを描いた『社畜と少女のその後』が電子書籍限定で2021年10月29日より不定期で配信された(全4話)
ハードな職場で働く中年男性が失踪した友人の娘を預かり、仕事と子育てを両立しつつ共に生きる姿を描いたホームドラマ作品。
冒頭部分
毎日仕事に追われる日々を送る独身の中年サラリーマン・東根将彦は、高校生時代の同級生の娘の君島優里と出会う。優里は母親・里美と2人で暮らしていたが、ある日母親が将彦の住所が書かれた置手紙を残して突然失踪してしまったと言う。優里の心境を知った将彦は世間には彼女との関係を内密にしつつ、同居生活を送ることになる。
優里は里美の一人娘で、物語開始時の年齢は13歳、中学2年生の少女である。
母親・里美と二人家族だったが、母親の失踪と同時に実家が引き払われ、残されたメモから将彦が住んでいるアパートを訪れ、居候となる。
優里は、父親と親戚には一度も会ったことがない。
中学3年生の2学期に、自宅に来た警察に事情聴取をされると同時に将彦と別離される形で児童相談所に預けられ転校する。
基本的には少女を保護しているかたちにはなっているが、父が不明、母親が失踪状態なので、本来は親戚か公的機関で後見人を優里にはつけるべきであった。
柳原望『高杉さん家のお弁当』では母子2人の家庭で母がなくなる際に遺言で未成年後見人を指定している。
優里の母里美が、死亡して遺言で未成年後見を指定していればいいのだが、将彦が指定されていても家庭裁判所は許可しないようには思われる。
だいぶあとに明らかになるが、里美は特に死を意識しての行動はしておらず、新家庭を優里に内緒でつくるための行動をしていたのであり、優里を将彦のもとにしばらく身を寄せさせるつもりで将彦の住所を教えたようである。
数週間程度の間なら親権者が居所指定権を行使しただけである。ただ、児童虐待といえるが、時代設定によってはこの程度は許容されたかもしれない。
連絡事項をおこたっているのはまずいが。手紙くらいだしておくべきだったろう。自分が連絡がとれなくなるようになるとは、この時点では思っていなかったようである。
2024年6月以降に将彦側から相談がきた場合は、年のさ性交罪で逮捕されるおそれがあるので、はやい段階で親戚か児童相談所に預けて未成年後見人をつけるようにするようアドバイスする。
将彦のみの安全のためである。
マンガの時代設定があまり明らかでないのだが、2024年6月以前では性交同意ン年齢の最低は13歳なので、疑われても優里が不同意性交を訴えない限りまず安全であった。
2024年6月段階では16歳未満の被害者と5歳以上差がある加害者の性交は同意があってもアウオであり、性交類似行為もけっこう幅がひろいので、優里がどんな供述を警察等でとられるかわからないので、安全のためには同居はまずいと思われる。
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