第39話 里中満智子『アリエスの乙女たち』の法的問題

オカモト弁護士の法的考察

第39回

里中満智子『アリエスの乙女たち』の法的問題

                       岡本馬路


前回はキグナス(白鳥座)であったが、今回はアリエス(おひつじ座)である。


※ネタばれ注意 本エッセイは里中満智子『アリエスの乙女たち』1973年~のマンガ及びそれを原作とするドラマ 1987年について最終回までのネタばれがあります。ネタばれなしに愉しみたいひとは本エッセイを読み飛ばしください。



『アリエスの乙女たち』は、里中満智子作の少女漫画。1973年より『週刊少女フレンド』(講談社)にて連載された。

1987年に南野陽子、佐倉しおりのダブル主演でテレビドラマ化され、大映テレビ制作の連続テレビドラマ作品としてフジテレビ系列で放送された。


漫画とドラマとでは2人の主人公の名前が変わっている。



ドラマのあらすじ

名門私立・仰星高校に、パリからの帰国子女である水穂薫(名前を原作の水穂路実から変更)が転校してくる。薫は愛馬エレクトラに乗り颯爽と馬術部に現れ、大会への選手として抜擢されたことから、部員たちの反感を買ってしまう。校内で何かと注目される薫に、クラスメートで演劇部員の久保恵美子(原作では笑美子)は憧れる。また、生徒会長で馬術部主将の磯崎高志、不良グループのリーダー格である結城司、馬術部顧問教師の大下直樹らは薫に心ひかれていく。


薫と恵美子は、ほぼ1年違いのおひつじ座(アリエス)同士でお互いシンパシーを感じ合う。実は2人は異母姉妹だった。ファッションデザイナーの母、水穂マキは恋人・久保哲也と別れる直前に薫を妊娠していた。マキはシングルマザーとなり薫を出産。マキと別れたのちに別の女性(恵美子の母)と結婚した哲也は娘・恵美子をもうける。彼女たちは過酷な運命に翻弄されながらも、励まし合い、ひたむきに愛を貫こうとする。


薫が馬術大会の選手に選ばれたことで馬術部の先輩部員は薫を敵対視し、部室に薫と司を閉じ込めてしまう。司は薫を組み伏せるが、「男の言葉なんか信用するな」と薫に言い、何もせず2人は夜を明かした。このことはたちまち学校内で噂になり、学校長は薫を校長室に呼び出す。しかし学校長は「何もなかった」という薫の言葉を信用した。


馬術大会で薫はエレクトラに致命傷を負わせてしまい、泣く泣くエレクトラを安楽死させる。薫は磯崎に思いを寄せるようになるが、薫は恵美子にこの恋を譲り司に愛を告白。司の姉・小百合は磯崎高志の父・淳一郎と不倫関係にあったが、小百合は捨てられてしまう。司は高志に「お前は恵美子と薫どっちが本当に好きなんだ?ふたりに俺の姉貴と同じ思いをさせたくない」と高志に殴りかかる。「薫さんも恵美子さんもどっちも同じくらい好きだ」という高志に、司はさらに殴り続けた。司が高志を半殺しにしたと噂は広まり、司は高校を退学することとなった。


司は陶芸家を志し、長谷川に弟子入りする。身体の関係を持っていた司の元彼女・津川敬子が司の子を妊娠。司ははじめ結婚を承諾しなかったが、敬子は結婚してくれなかったらお腹の子供と一緒に死ぬ、と踏み切りの中に入り自殺しよう(原作では歩道橋の上から飛び降りようとしていた)とする。司は必死で踏切から引きずり出し、敬子との結婚を決意する。その頃、薫は母・マキが再婚することになり新たな生活が始まる。


マキの結婚祝いのプレゼントを買いに来たデパートで、司と再会を果たした薫。言葉も無く、見つめ合う2人。だがその様子を、敬子が見ていた。泣きながら走り出す、敬子。足を踏み外し、流産の危機に。病院に搬送され、医師から「早産の危険がある」と告げられる。病室で薫は敬子から、自分は母親を早くに亡くし父親の再婚相手に育てられたこと、中学時代その養母が妊娠するも自身に気を使い中絶して父親に責められているのを目撃し、非行に走ったこと、司と出会い運命を感じたことを話して「司を私から、とらないで……」と薫に涙ながらに打ち明ける。


敬子は無事に、男の子を出産する。だが未だに司が薫を想い続けていることに嫉妬した敬子は、薫のマンションに子供を置き去りにしてしまい、薫が誘拐したと警察に通報。薫は逮捕されてしまうが、敬子の狂言であることが明らかになり、薫は釈放された。


司は工房でバーナーの異常に気づかず釜が大爆発を起こし、失明してしまう。司は師匠から、破門を言い渡される。小百合を捨て別の女性と付き合い始めた淳一郎は女と心中してしまう。賠償金の支払いなどにより、磯崎は進学をあきらめ就職する。恵美子は磯崎と交際していたが、両親に反対されて他の男性と無理矢理結婚させられそうになっていた。磯崎は転勤になることを告げ、「自分が本当に好きなら、東京駅に来てくれ」と恵美子に告げる。恵美子は家を飛び出し、磯崎の元へ行く。やがて恵美子は妊娠。司は高志に「そうか、お前も親父になるのか」と2人の結婚を祝福した。

仰星高校では、薫の不倫と恵美子の同棲が問題視されていた。校長室に呼び出された2人は退学することを告げ、学校を後にした。


敬子は薫と司を憎み続けることに疲れ、司と離婚。息子・大介は司に引き取られる。


司は陶芸家として独立し、薫は「口がきけないおばさん」として手を薬品でボロボロにしてばれないようにして司の世話をすることに。司は苦労をかけたくないと別れようとするが、長谷川と娘・千草(原作では千尋)に「苦労することすら、愛する人のためなら喜びなのだ。」と諭されて薫と共に生きることを決意する。作品を完成させて「この壷は、お前だ。薫……」とおばさんの正体に気付いていたことを話し、ついに2人は結ばれる。


 問題点としては

①  青少年保護育成条例の問題がありそう

②  礒崎高志の退学は不自然

③  三角関係のライバルが妊娠したとして身を引くのはどうか

といったところである。

①  青少年保護育成条例の問題がありそう

少女マンガや大映ドラマのストーリーにつっこむというのも野暮ではあるが、薫の不倫については結婚できない者の間での性行為をしているのであり、結婚目的以外の淫行を罰する青少年保護条例の淫行罪にひっかかりそうである。

②  礒崎高志の退学は不自然

 礒崎の父親の不始末による借金のせおいかたについては相続放棄をすればよかった。

また、学費が支払えなくても、宗教関連の高校と思われる仰星高校では授業料免除制度等は1970年代でもあるし、国立大学へ現役合格させ、入学金授業料免除をさせれば、高校の名もあがるはずであった。

この段階で退学して就職するというのは高志の生涯収入の面でも損である。

まわりの大人はなにをしていたのか。高志の後見人か親権者がいるならちゃんと仕事をしてほしかった。

③  三角関係のライバルが妊娠したとして身を引くのはどうか

『東京ラブストーリー』でもリカが身を引くが、これは嫡出子(婚姻関係で生まれた子)と非嫡出子・婚外子の差別があった名残であろう。シングルマザー差別はあるが、自分がシングルマザーになる可能性があるから身を引いたということになる。

 相続分差(以前は相続人に非嫡出子と嫡出子がいる場合には、非嫡出子の相続は嫡出子の2分の1であった)がなくなったこと、シングルマザーの支援制度がある程度充実した現在、ここで自分が非嫡出子を産む立場になったとしても、身を引く必要はなさそうに思われる。


 1973年段階で結婚が永続的でなく一時的なものである、それを前提としても生涯をつらぬくアリエスの乙女、ということで感情移入してみた者も多かったことだろう。ただ、名門進学校としては1970年代でも4年制大学進学をしたうえでの20代後半での結婚がおおかったのではなかろうか。恋愛も結婚も人生の前のほうに重点がおかれすぎているように2025年からみると感じられる。


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