異世界筋肉無双~魔法と鉄砲の世界で圧倒的な筋肉で無双します~

外人だけどラノベが好き

第1話

わたしの名前はアルカディア。


数多の世界を治める天界の女神なのよ。


神格を得てまだ間もない新米女神だけど、それでもやる気だけは満々なの!


一日中、この世界の豊作を祈願したり、あの世界の伝染病を根絶するために、一生懸命頑張ってるわ。


わたしには夢があるの。


わたしが担当する全ての世界が、平和で美しい場所になるようにすることよ。


でも、そんなわたしの夢が叶うには、まだたくさんの時間が必要みたい。


女神の数は少ないのに、女神に与えられた世界の数はあまりにも多くて、全ての世界を一つ一つ管理するのは大変なことなのよ。


だから、世界が不条理で悪いものに感じられても、あまり怒らないでほしいの!


わたしたち女神も、自分たちなりに頑張って世界を管理してるんだから。


毎日、山のように積まれた書類と格闘しながらね。


「えっとえっと……今日は勇者召喚のお仕事かしら?」


女神にも色々なお仕事があるのよ。


今日任されたお仕事の場合は、勇者を召喚する作業ね。


一つの安定した世界があるとしたら、その安定した世界から、まだ安定していない別の世界へ勇者を送って、二つの世界のバランスを取り、両方の世界を平和にするっていう作業なの。


今日は『アストリア大陸』っていう場所が戦争で荒廃しちゃったから、ここに勇者を送ることになるわ。


勇者はどこから送るかって?


もちろん、『地球』にある『日本』からよ!


他の世界や他の国からも勇者をたくさん送ってみたんだけど、普通の勇者たちはステータスシステムを理解するのにもすごく時間がかかったの。


でも、ライトノベルっていう文化が発達した日本っていう国から勇者を送ると、日本人たちは『本で見たことある!』なんて言ってすぐに理解してくれるし、それに真面目だから、あっという間に異世界に馴染んでくれるのよね。


ただ、日本人だからって長所ばかりじゃないのよ。


マッチョさが足りないって言うか……。


勤勉で真面目で、気遣いができるのはいいんだけど、その反面、野生的な部分が足りなくて、すぐに気苦労しちゃうことが多いの。


だから最近は、アメリカも日本のライバルとして浮上してきてるの。


ホッケー選手やラグビー選手みたいな、荒っぽい少年を送ると、すぐに弱肉強食の世界に馴染んでくれるからね!


「もちろん、わたしは日本の方が好きだけどね。こう見えても日本贔屓(にほんびいき)なのよ!」


てへっ!


えっと〜、どんな勇者候補がいるかしら?


できれば日本人らしく謙虚で、心根も優しくて、それでいて体も強靭だったらいいんだけど……。


ちょっと理想が高すぎるかしら?


そう思ってたんだけど。


「いたああああああああっ!!!」


今日は運が良かったわ!


わたしが求めていた理想のタイプが、ここにいたんだもの!


立川(たちかわ)ハヤテ。


世界レベルの格闘家のお父さんと、オリンピック体操選手のお母さんの間に生まれた、まさにエリート家系!


それに性格も円満で、色々な生徒たちと交友関係も良好なんですって。


先生たちからも愛され、生徒たちからも慕われる、まさに模範生の典型ね!


身長192センチ。体重99キロ。


わたしが求めるマッチョでありながら、同時に日本人特有の長所も兼ね備えた、まさに理想的な勇者候補!


「立川ハヤテ! 今日の勇者はあなたに決めたわ!」


そう思ったわたしは、立川ハヤテにトラックを一台送ったの。


轢かれたら異世界に転生することになる、例のトラックよ!


でも……。


パアァァァァァン!!!


クラクションを鳴らしながら突っ込んでくる軽トラック。


立川ハヤテは驚いて目を見開いたわ。


普通の人ならここで左右に身をかわすけど、残念ながら女神であるわたしが避けられないように呪いをかけたから、軽トラックを避ける方法はないはずよ!


でも、立川ハヤテは避けなかった。


むしろ……。


「来い!」


そう叫んだハヤテは、トラックを受け止める構えを取って……。


ゴオオオオッ!


気を溜め始めたかと思うと……。


グシャアァァァァン!!!


トラックと正面から衝突して、5メートルほど後退しただけで、トラックの突進を受け止めてみせたの。


「えええええええええっ!!!!!?????」


立川ハヤテさんは無事で、居眠り運転をしていたトラックの運転手だけが怪我をしたわ。


信じられない怪力よ!


でも……だからこそ、ますます連れて行かなきゃいけない理由があるのよ!


その後もわたしは、ハヤテを異世界に連れて行くために、色々な策略を練ったわ。


看板落下事故、感電事故、ジェットコースター落下事故、溺水事故、転落事故。


ありとあらゆる事故を仕掛けたけど、立川ハヤテは肉体を使うことなら何でもござれで、全部乗り越えちゃったの!


結局、わたしは立川ハヤテを連れて行くことができなかったんだけど……。


3年後。


わたしも女神の仕事にそろそろ慣れてきた頃、その事件は起こったの。


それは案の定……立川ハヤテが乗っていた修学旅行の飛行機が、上空1万2千メートルから墜落しちゃったのよ!


いくらすごいハヤテでも、この事故には対応できず、結局死んでしまったわ。


そしてそれが、異世界転移の始まりだったの。


その3年間に送った勇者たちは、ことごとく失敗していたから。


「立川ハヤテ、わたしの名前は女神アルカディア。あなたを必要としている世界があるの。その世界を救いさえすれば、あなたは事故の前日に戻って生き返ることができるわ」


わたしがそう言うと、空手の構えでわたしに拳を向けていたタチカワは、すぐに構えを解いたわ。


「女神? 怪しいやつではなさそうだな。俺は何をすればいいんだ?」

「あなたのすべきことは、戦争を止めることよ。どんな方法でも構わないわ。その世界の人々が、これ以上争いで自分たちを傷つけず、文明を発展させられるように導いてほしいの」


「いわゆる喧嘩の仲裁ってやつか。慣れてる仕事だ。任せておけ」


なんて快男児なのかしら!


タチカワを選んだのは、やっぱり間違いじゃなかったわ。


「それにしても妙だな……。最近、やけに事故が多い。飛行機事故もそうだ。あんたは、この事故とは関係ないんだろうな?」

「そ、それは……えっと……」

「どうした? 飛行機事故と関係があるのか?」

「ひ、飛行機事故は当然知らないわよ!タチカワ君は運が悪かったみたいね!おーほほほ!」


嘘じゃないのよ。


他の事故は全部わたしが起こしたものだけど、飛行機事故だけは、本当にタチカワ君の運が悪かっただけなんだから。


「そうか?じゃあな。行ってくる」


そう言って、タチカワは異世界へと続く門をくぐったわ。


今日からタチカワのどんな冒険が繰り広げられるのかしら?


今からもう、とっても楽しみなのよ。

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