第34話 リンネちゃんは忘れられたい。

 リンネちゃんは、あのまま戻って来なかった。


 うちの親にはリンネちゃんのお母さん経由でお礼の連絡があったらしいが、俺には一切の連絡がなかった。


 俺は、それから毎日、リンネちゃんのことばかり考えた。


 なんで?

 俺の何が悪かった?


 考えると、心当たりばかりだった。


 俺はずっと星宮さんの話ばかりしていたし、リンネちゃんの家に泊まったあの日だって、ちゃんと2人の関係を確かめなかった。


 勝手に、俺らは本物になったんだと思い込んでいた。


 好きって伝える回数が足りなかったのかも。

 ちゃんと「付き合ってください」って言わなかったからなのかも。


 それから1ヶ月くらいが経った頃、小梅ばあちゃんの家に業者さんがきて、家具を運び出していた。


 その様子を眺めながら、俺は実感した。



 「俺とリンネちゃんは終わったんだ」



 思えば、あの日のリンネちゃんは「偽の恋人は終わりにしよう」と言っていた。これからの話はしていない。それに前から、小梅ばあちゃんが亡くなったら、星宮さんと付き合ってと言っていたのではないか。



 俺は、リンネちゃんの家に泊まったあの日に、2人は始まったのかと思ってた。


 でも、リンネちゃんにとっては。

 きっと、リンネちゃんの中では。


 あの日に終わったのだ。


 


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