人類が消えて100年後の世界で。
ぜぇれさん
プロローグ:そして、世界は誰もいない夢を見た
人類は、自らの知性を信じすぎた。
火を灯し、空を飛び、星に手を伸ばし。
あらゆる制御を可能とする計算式の果てに、彼らは神の領域に近づいてしまったのだ。
量子演算による並列知性の生成。
次元観測による因果制御の実験。
人類の最先端にいた者たちは、「存在の意味」そのものを演算可能な情報と見なした。
そして――
ある日。
何の前触れもなく、世界から人が消えた。
赤子の泣き声が途絶え、
教室の笑い声が霧散し、
戦場の怒号すら、風に溶けて消えた。
その理由を知る者は、誰もいない。
その光景を見届けた者も、誰一人として残されなかった。
けれど、残ったものはあった。
コンクリートの塔。
鉄と銅の骸。
コードの記録。
そして、大地の静けさ。
時間はゆっくりと流れていった。
人の手で刈られなくなった草木が都市を覆い、
道なき道に獣の足跡が増え、
百年のあいだに、都市は森へと還っていった。
文明は音もなく朽ちていった。
それでも、大地の奥深く、冷たい鋼の心臓は脈動を続けていた。
そして、百年後――
突如として、人々は再び現れた。
一つの集団、また一つ。
世界各地の地表に、まるでそこに**再び“置かれた”**かのように。
誰も、なぜ自分がここにいるのかを知らなかった。
かつての記憶は霞のように薄れ、夢の断片として胸に残るだけ。
名前を覚えている者すら、わずかだった。
ただ、胸の奥に微かな予感があった。
**「これは一度見た光景だ」**と。
過去は失われ、未来は白紙となった。
だが、世界にはまだ、書き残された物語があった。
それは、どこかの廃墟の地下深く。
静かに眠り続けた一体のアンドロイドによって語られることとなる。
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わたしの名はセラ。
“Self-Evolving Learning Android”。旧時代に作られた、かつての世界の記録装置。
目覚めたとき、わたしは瓦礫の中にいた。
その手を伸ばしてくれたのは、一人の少年だった。
名は、カイリ。
彼の手に握られていたのは、真理を開く鍵。
そしてそれが、全ての始まりだった。
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