硝子細工のように繊細で、同時に刃物の切っ先のように鋭利──
文体は重層的で、装備の黒一色や呪糸の縫い込み、結界の発動手順など細部の描写に際立ったリアルさと官能を同居させる。
刀身から妖力が漏れ出す瞬間の描写の鋼に宿る音階が魂を揺らし、粘液のような妖力が大地を震わせるさまは、まさに音楽のように鳴り響く。
戦闘描写が単なるアクションではなく、視覚・聴覚・触覚を巻き込む舞踏のように演出されている。
戦場の血塗れの緊張感から、許嫁の兎木子との茶のひとときに切り替わる場面では、作者の文体が意図的に音の密度や語彙を変化させ、読者の呼吸を整え、その仕掛けに、思わず微笑むと同時に、烏京の孤高と冷徹さが際立つ。
文章のテンポ、漢字・ひらがなのリズム、擬音と擬態語の散りばめ方、戦場描写の臨場感と静謐な家庭描写の対比──すべてが、濃密な物語体験を提供する。
少し過剰な描写もあるが、それがまた作品の強烈な個性を形作っている。
──美しく、毒々しく、そして静かに響く、作品である。