猫かぶりの義妹は俺と一緒にいる時だけナマケモノ並みの駄目人間になる
秋桜空間
第1話
1
「ほら、あの子だよ。すげー可愛いだろ?」
「うわ、やば!噂には聞いてたけど、
同じ人間とは思えないくらい顔整ってんじゃん。芸能人みたい」
「いやいや、芸能人以上だろ。あれは」
「あんなに可愛いのに謙虚だし、いい子なんだよなー」
1年C組の教室の前、数人の男子が1人の女の子を見ながら
そんな話をしていた。
注目の的になっている女の子の名前は月野真白。
ウェーブのかかったセミロングの茶髪。
ぱっちりとした瞳。
綺麗にスーッと通った鼻。
お姫様のように可愛らしいそのルックスで
学校中で噂になっている女の子だ。
「ちょっと男子!真白ちゃん困ってるでしょ。
そうやってじろじろ観察すんのやめなさいよ」
月野真白の周りにいた女子の1人が腕を組みながら男子に言った。
「私は大丈夫だよ。加奈ちゃん」
声を荒げていた女の子を月野真白は落ち着いた様子でなだめる。
「そんなことより、私のせいで
気ままに会話できなくなっちゃっててごめんね」
困り顔で真白が言うと、
周りの女子たちはたまらなさそうに表情を緩める。
「全っ然そんなことないよ!」
「もう、真白ってなんでそんないい子なの?
私心配だよー。真白が変な男に引っかかるんじゃないかって」
「そうそう。真白ちゃん、既にいろんな男子から告白受けてて
本当にすごいなって思うけど、気を付けないとだめだよ。
男は皆狼なんだからね!」
女子たちの忠告に真白はニコッと笑って答える。
「大丈夫だよー。私誰とも付き合うつもりないから。
いつも守ってくれてありがとね」
その言葉に女子たちが感激した様子で真白に抱きついた。
「あー真白といるとほんと癒される!大好き!」
「うん。私もみんなの事大好きだよ」
女子たちと真白の仲睦まじいやり取りを
教室中の皆が眺めて心を浄化させていた。
月野真白最高。
月野真白今日も天使。
そんな心の声が教室中から聞こえてくるような気がした。
真白はそんな状況にニヤッと顔を歪ませる。
よしよし、今日も私の立ち振る舞いは完璧で皆から愛されてる。
ああ、平和だな。
噛みしめるように真白は心の中でそう呟いたのだった。
2
◇◇◇◇
キーンコーンカーンコーンと終業のチャイムが鳴る。
「ただいまー」
学校が終わり、家に帰ってきた真白は
制服のままソファに飛び込んだ。
ソファが柔らかい生地が優しく真白の体を受け止める。
はあ。と思わず真白はため息をついた。
「つ~か~れ~た~。お兄ちゃーん肩揉んで~」
先に帰ってきて夕食を作っていた1つ上の兄、月野夜空に
真白は言った。
普段の学校で出している綺麗でおしとやかな声ではなく、
飾り気のない、ギャーギャー騒ぐ子供のような声である。
キッチンからおたまを持ちながら現れた兄の夜空は
「おい、制服皺になるぞ。とりあえず着替えて来いよ」
と言う。
「ん~」
真白は渋々ソファから起き上がる。
そしてシャツのボタンを
第一ボタン、第二ボタン、と順に外していく……が、
第三ボタンで外すのにてこずり、
「ん~。めんどくさ~い。シャツってなんでこんなボタンたくさんあるの?
お兄ちゃん脱がして~」
と音を上げた。
そしてまたソファに寝転がる。
「お、おい。だめだって。洗濯してアイロン掛けるの俺なんだからな」
「知らなーい。だからお兄ちゃんが脱がせばいいでしょー」
と真白が言う。
はあ、結局か。と夜空は呟く。
歩いて真白が寝ころんでいるソファの横に立った。
そして、慣れた手つきで真白のシャツのボタンを外し始める。
ぷち。ぷち。ぷち。ぷち。
徐々に真白の水色のブラジャーがあらわになっていくが、
夜空は顔色一つ変えない。
逆に真白の方も兄に服を脱がされているというのに、
全く抵抗を示さない。
「……なあ、真白。さすがに高校生になってもこれはまずくないか?」
ボタンを全部外し終えた夜空が言う。
「何で?私的にすっごく楽で助かるんだけど。
お兄ちゃんだって、私のお世話するの好きでしょ?」
「……。起きろ。シャツ脱がせられないから」
真白の質問を無視して夜空は言った。
「んー」
真白は言われた通り起き上がる。
3
そう。これが月野家兄妹の日常なのである。
小さな頃から真白はナマケモノで、
日常のいろいろな雑事、
例えば、服を着る、脱ぐ
お風呂に入る、髪や体を洗う。
食事する、等々は
夜空が代わりにこなしていた。
小さな頃はそれでも仲が良い兄妹ということで問題にはならなかったが、
高校生になった今でも、2人の習慣は変わっていないため、
周りの人に知られるとぞっとされることが多いのだ。
4
夜空は真白のスカートに手を伸ばし、
腰の留め具を外す。
「服を脱いだらさっさとお風呂入っちゃうぞ。いいな」
「はーい」
と真白は為されるがままに返事をする。
「……はあ。やばいよな。このままじゃ絶対いけないよなあ」
と言いながら夜空は真白のスカートを脱がした。
「……ん?」
そこで夜空の手が止まる。
「真白。これ俺のパンツだよな?」
夜空は真白が履いていたボクサーパンツを見て言った。
「あー。うん。お兄ちゃんのパンツ履き心地いいから
最近履いてるんだー」
真白は淡々と言った。
「だからか!最近俺のパンツの減りが速いと思ってたんだよ。
ちゃんと自分の履けよ」
「え~やだ~」
真白は下着姿ではしゃいだように走り出してお風呂場へ向かう。
「あ、待て」
と言って夜空も真白を追いかけてお風呂場へ向かった。
追いかけられるのが嬉しかったのか、あはは、と真白は笑った。
「別にお兄ちゃんも私のパンツ履いていいんだよ?」
最後に真白のそんな声が聞こえて、ぱたんとお風呂場の扉は閉められた。
2人はそのままいつも通りお風呂に入る。
これが月野家兄妹の日常なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます