第9話

「え?! 冗談よね!? out? 急に人が倒れたわ!? これって、冗談よね!? そうでしょ、何かの笑えない冗談なんだわ!」 


 私は、スマホを耳に押し付けながら、通話先の男に向かって叫んでいた。それに、酷く混乱もしていた。


「でも、倒れただけで、みんな息はしているぞ。outって、一体、何なんだ!?」


 長谷則は、倒れた人達の方へ注意深く近づきながら、意外なことを言いだした。


「息はしている?」

「ああ、そうだよ。ほら、最初に倒れた清田さんは、耳をすませていると、微かに呼吸をしている音が聞こえてくるんだよ」


 そう言った長谷則は、倒れた清田を起こそうとしながら、こちらを見ていた。戸田は、倒れた人達と私のスマホに目を行き来させながら、パクパクと口を開閉している。 


 スマホからは、男の冷淡な言葉が出てきた。


「どうかね?」

「あ……あ……」


 私は、更に混乱した。今になってから、ようやく立っているのもやっとだと気がついた。足がガクガクと震えていのだ。


 腹野と新居田と早川は、こちらを……いや、私だけを、荒い呼吸をしながら酷く不安そうな目で見つめていた。


 私は、強めに首を左右に少し振ると、スマホの相手に慎重に話し掛けていた。


「ねえ。これは、あなたがやったの? それに、倒れた人達はどうなったの? 事と次第によってはただじゃおかないわよ」

「いや、わははははは。そうくるかい? 案外気丈なんだね。そうだねえー。じゃあ……うん! こうしよう。ここから、西新宿まで歩いて喫茶店「まるまるまじろ」へ君たちは行くんだ。そうだ。素敵なタイムリミットも付けよう。10分だ。それじゃあ、いいかい? 今からきっかり10分だよ。そうしないと……君たちもoutになる。あ、歩いてだよ。走ったり、自転車や車などの乗り物も使っちゃダメだ」

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