小説「ネクストポジション! ~ワールドネクストカップ狂騒曲~」
志乃原七海
序章:宣戦布告
社長、専務、次長、会長も巻き込んだ「ワールドネクストカップ」の開催と、それぞれの考察を含めた続編を執筆します。よりカオスでエキサイティングな展開にご期待ください!
小説「ネクストポジション! ~ワールドネクストカップ狂騒曲~」
序章:宣戦布告
株式会社ネクストステップの営業三課に、束の間の平穏が訪れたかに見えた矢先。
全社員に一斉送信されたメールが、再び社内を揺るがした。
件名:【緊急開催決定!】第一回 ワールドネクストカップ ~真のネクストを掴むのは誰だ!?~
差出人は、なんと代表取締役社長 ネクスト一郎(65歳)。
ネクスト一郎社長は、創業家出身の三代目。最近は「ネクスト隠居」を囁かれていたが、どうやらまだまだ野心は衰えていなかったらしい。
メール本文には、こう記されていた。
「諸君!我が社は常にネクストを目指す企業である!そこで!社員のモチベーション向上と、次世代リーダー発掘のため、ここに『ワールドネクストカップ』の開催を宣言する!優勝者には…ふふふ、素晴らしい『ネクスト』が待っているぞ!」
添付資料には、大会概要が記されていた。
審査員は、ネクスト一郎社長と、なぜかご意見番として駆り出されたネクスト先代会長 ネクスト大五郎(88歳)。会長は既に「ネクストあの世」に片足を突っ込んでいると噂されていたが、この手の騒ぎは大好きらしい。
そして、このカップには役職の垣根はない。つまり、社長も、専務も、部長も、課長も、ヒラ社員も、全員が「ネクスト」を賭けて戦うというのだ!
第一章:参戦者たちの野望(新たなる珍客たち)
ネクスト一郎社長(65歳)
彼の狙う「ネクスト」:ネクスト「カリスマ創業者(として再評価)」。最近、自分の功績が薄れていると感じ、このカップを機に再び脚光を浴びようと画策。優勝者に与える「素晴らしいネクスト」とは、自分の銅像建立の権利かもしれない。
彼の「ワールドネクストカップ」戦略:圧倒的権力による「鶴の一声」ジャッジ。 気に入らない提案は即却下。お気に入りの社員には謎の加点。
早乙女「イエスマン」専務(58歳)
入社以来、社長へのゴマすり一筋。社長のどんな無茶振りにも「素晴らしいご慧眼です!」と返すのが得意技。
彼の狙う「ネクスト」:ネクスト「社長(ただし現社長の傀儡)」。社長のご機嫌を取り続け、禅譲を狙う。
彼の「ワールドネクストカップ」戦略:社長の意向を完璧に読み取り、先回りして社長が喜ぶアピールを連発。 社長の銅像建立案には誰よりも早く賛同するだろう。
影山「ミスター調整」次長(52歳)
営業本部の次長。社内政治に長け、常に各方面に根回しを欠かさない。敵を作らないが、味方も少ない。
彼の狙う「ネクスト」:ネクスト「部長(安全パイ)」。波風立てず、順当な昇進を望む。今回のカップは正直迷惑だが、参加しないわけにもいかない。
彼の「ワールドネクストカップ」戦略:目立たず、騒がず、しかし確実にポイントを稼ぐ。 全方位に当たり障りのない提案をし、誰からもマイナス評価を受けないように立ち回る。
ネクスト大五郎会長(88歳)
審査員として参加。しかし、彼の真の狙いは不明。ただ、社内の混乱を肴に長生きしようとしている節がある。
彼の狙う「ネクスト」:ネクスト「面白い余生」。最近の楽しみは、社員たちが右往左往する姿を見ること。
彼の「ワールドネクストカップ」戦略:気まぐれなコメントで場をかき回す。 時折、核心を突くような鋭い指摘もするが、大抵は「わしが若い頃は…」で終わる。
そして、我らが営業三課の面々も、この未曾有の祭りに否応なく巻き込まれていく。
山田「エナジー」太郎:社長の「ネクスト」発言に、「押忍!社長のネクスト、全力で応援させていただきます!」と早速大声でアピール。彼の辞書に「身の程知らず」の文字はない。
鈴木「サイレント」花子:社長と会長の過去の発言、趣味、健康状態に至るまで、既にデータ収集済み。彼らが好みそうな「ネクスト」をピンポイントで提案する準備は万端。
佐藤「レガシー」一郎:社長とは旧知の仲(だと本人は思っている)。「一郎ちゃん(社長のこと)も、まだまだ若いなぁ!俺も負けてられん!」と、なぜか対抗意識を燃やす。
高橋「アイデア」健太:このカオスな状況こそ、自分の奇抜なアイデアが輝くチャンスと捉えている。「ネクストステップ社のネクストフロンティアは宇宙です!」と、いきなり壮大な構想をぶち上げる。
第二章:珍・競技種目(ワールドネクストカップ開幕!)
ワールドネクストカップの競技は、週替わりで発表された。
第一種目:「ネクストスローガン考案!~社長のハートを撃ち抜け~」
社長が最近ハマっているという「言霊」をテーマに、会社のネクストスローガンを考案する。審査基準は、社長の琴線に触れるかどうか、ただそれだけ。
山田:「気合!根性!ネクストステップ!押忍!」(社長「うーん、熱いが…古い!」)
鈴木:「静謐なる前進、確実なるネクストへ。」(社長「…悪くないが、地味だな」)
佐藤:「温故知新!古き良きネクストステップ魂!」(社長「佐藤君、君は変わらんなぁ…」)
高橋:「DX、GX、SX!ネクストの向こう側へトランスフォーム!」(社長「…SXとは何だね?」)
早乙女専務:「社長の笑顔が、我が社のネクスト!」(社長、満更でもない顔)
第二種目:「ネクストおもてなし選手権!~会長を喜ばせろ~」
会長をおもてなしし、その満足度を競う。会長の機嫌一つで評価が乱高下する恐怖の競技。
山田:会長に肩もみ。「会長!ネクスト百寿、お祝い申し上げます!」(会長「…腰じゃ、腰を揉んでくれ」)
鈴木:会長の好物である希少な日本茶と和菓子を、絶妙なタイミングで提供。さらに、会長が若い頃に熱中したという将棋の話題を振る。(会長「…やるな、お主」)
佐藤:会長と一緒にゲートボール大会に出場。昔の武勇伝を語り続ける。(会長「…もうその話は聞き飽きたわい」)
高橋:会長の半生をVRで体験できる「ネクストメモリアルシアター」を提案。(会長、途中で寝る)
影山次長:会長の健康を気遣い、最新の健康グッズをプレゼント。当たり障りのない世間話に終始。(会長「…つまらん男じゃ」)
第三種目:「ネクスト新規事業プレゼン!~予算は…社長のポケットマネー!?~」
実現可能性は度外視。社長が「面白い!」と思えば、ポケットマネーから(微々たる)出資があるかもしれないという夢のような企画。
山田:「ネクスト応援団株式会社!企業の応援で日本を元気に!」(社長「…応援はもう十分だ」)
鈴木:「社内インフルエンサー育成プログラム。会長をトップインフルエンサーに。」(会長「わしを晒し者にする気か!」と怒るが、少し嬉しそう)
佐藤:「ネクスト駄菓子屋チェーン。昭和レトロで若者の心を掴む!」(社長「…ノスタルジーもいいがね」)
高橋:「株式会社ネクストステップ、月面支社設立プロジェクト!」(社長、さすがに苦笑い)
早乙女専務:「社長の功績を称える『ネクスト一郎記念館』建設プロジェクト!」(社長、目を輝かせる)
社内は日を追うごとにカオスを極めていった。
廊下では社長の顔色を窺う社員が右往左往し、給湯室では会長の好物の情報が高値で取引された。
営業三課の若手たちは、もはや誰が勝つかよりも、この騒動がいつ終わるのかということしか考えられなくなっていた。
第三章:まさかの結末、それぞれのネクスト
数ヶ月に及んだワールドネクストカップも、ついに最終選考の日を迎えた。
社長室に呼び出されたのは、意外な顔ぶれだった。
山田、鈴木、早乙女専務、そして…なんと新任の木村課長。
ネクスト一郎社長は、満足げに言った。
「諸君、よくぞここまで戦い抜いた。特に早乙女君、君の『ネクスト一郎記念館』案は素晴らしかった。建設に向けて前向きに検討しようじゃないか!」
早乙女専務は感涙にむせんだ。彼のネクスト「社長の腹心」ポジションは確固たるものになった。
「山田君、君の熱意は買う。そのエネルギーを、記念館建設の推進リーダーとして発揮してくれたまえ!」
山田は「押忍!お任せください!」と、早くも記念館の完成予想図を脳内に描いていた。ネクスト「記念館建設委員長(ただし実務は丸投げされる)」だ。
「鈴木君、君の情報収集能力と分析力は、記念館の展示内容充実に不可欠だ。頼んだぞ」
鈴木は静かに頷いた。彼女のネクスト「記念館主席キュレーター(兼、社内ゴシップ収集担当)」が決定した。
「そして…木村君」
社長は、これまであまり目立たなかった木村課長に目を向けた。
「君は、この騒ぎの中、淡々と営業三課の業績を上げ続けた。実に素晴らしい。君こそ、真の『ネクスト』を体現している」
社長は高らかに宣言した。
「ワールドネクストカップ、グランプリは…該当者なし!だが、木村君には特別賞として、営業本部長への『ネクストチャレンジ権』を与えよう!」
「「「「えええええええっ!?」」」」
まさかの展開。
このカップは、結局のところ、社長が自分の記念館を建てさせるための壮大な茶番だったのか…?
いや、あるいは、社長なりに「真のネクスト」を見極めようとした結果なのかもしれない。
ネクスト大五郎会長は、その様子をニコニコと見守りながら、ポツリと呟いた。
「ふぉっふぉっふぉ…一番面白い『ネクスト』を見せてもらったわい」
彼のネクスト「観劇三昧の余生」は、まだまだ続きそうだ。
佐藤は、相変わらず「俺が若い頃は、社長ももっと…」とぼやいていたが、誰も聞いていなかった。彼のネクストは、永遠に「過去」にある。
高橋は、月面支社設立プロジェクトの資料を、そっとシュレッダーにかけた。しかし、彼の頭の中では、既に「ネクスト火星移住計画」が始まっていた。
そして、株式会社ネクストステップは、社長の銅像(のちに記念館に変更)が建つという、新たな「ネクスト」へと進み始めた。
珍な会社員たちの、ネクストポジションを求める戦いは、形を変え、場所を変え、おそらく永遠に続いていくのだろう。
考察まとめ(ワールドネクストカップ編):
社長、専務クラスの「ネクスト」:彼らにとっての「ネクスト」は、必ずしも昇進だけではない。自己顕示欲の充足(社長)、権力への執着(専務)、あるいは単なる楽しみ(会長)など、より個人的で複雑な動機が絡み合う。
次長の悲哀:中間管理職のさらに上、しかしトップではない微妙な立場。大きな波乱を望まず、堅実な「ネクスト」を求めるが故に、こうした狂騒曲では埋もれがち。
会長の役割:一線を退いたように見えても、その影響力や存在感は無視できない。時に騒動を煽り、時に本質を突く、トリックスター的な存在。
「ワールドネクストカップ」という茶番:一見馬鹿げたイベントも、組織のトップの鶴の一声で開催され、社員たちはそれに振り回される。これは、多くの会社で見られる「トップダウンの珍プロジェクト」の縮図かもしれない。
真の「ネクスト」とは?:派手なアピールや奇抜なアイデアだけが「ネクスト」ではない。地道な努力や実績こそが、本当の「ネクスト」に繋がることもある。しかし、その評価軸すらも、トップの気まぐれ一つで変わるのが、この「珍」な世界の常なのかもしれない。
このワールドネクストカップは、会社という組織の不条理さ、人間の滑稽さ、そしてそれでも「ネクスト」を求めずにはいられない哀しい性(さが)を、より鮮明に描き出したと言えるだろう。
社長、専務、次長、会長も参戦した「ワールドネクストカップ」、いかがでしたでしょうか?物語はさらにカオスな方向へ進みました!
Special Thanks to you.suzuki for the initial spark of inspiration.
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