第2話
リリーの生家。グランツ公爵家は「光の魔術」を得意としている家だった。
そもそも魔術は光・火・水・風・闇・地と分かれているのだが、魔術を使える人間は全員どの属性も学べば使える様になる。
しかし、魔術においての「得意」とは、その魔術を使用した時の威力の違いや使える魔術の種類が多いなどによって決まる。
ただ、グランツ家は「光」に長けながらも魔術においてはどの魔術も軒並み平均を超えていた。そんな家の長女としてリリーは生まれた。
漆黒の髪は父親譲り。それに相対する様に白く透き通った肌は母親譲りだったのだが……なぜか目の色はキラキラと光輝く「黄金」で、これはどちらからの遺伝でもなかった。
「これはどういう事だ? なぜこの子の目は俺でもなければ君の目の色をしていないんだ? 君、まさか……」
「ちょっと待って! 私はそんな事、神に誓ってしていないわ! 信じて!」
「じゃあどうしてこの子の目は黄金なんだ!」
「そ、それは……」
この事実により一時は母親の不貞が疑われ、夫婦の仲が険悪になったらしいが、王宮お抱えの医師と魔術師による診断で「これは先祖からの『ギフト』つまり隔世遺伝によるもの」だと判明した。
ちなみに、魔法の潜在的能力が高ければ高い程目に影響が出やすく、またその色は属性によって異なると言う。
そして「目さえ見ればその人物の得意な属性だけでなく、能力の高さが分かる」とまで言われていた。
当時、リリーを診断した古参の魔術師たちや医師曰く……。
「そもそも昔はグランツ家と言えば『黄金の目』と言われる程じゃったなぁ」
それくらい『黄金の目』は昔から有名な話らしく、赤ん坊のリリーを見ながら昔の思い出話に花を咲かせていたそうだ。
こうして疑いが晴れたリリーは夫婦や使用人たちからたくさんの愛情を受けて育った。
元々、夫婦はなかなか子供が出来ずに悩んでいた中での待望の子供だった事もあり、喜びもひとしお。
それ故に、父親はリリーの目の色を見て母親を疑ってしまったのだろう。
仕事人間と評判だった父親は出来るだけ早く仕事を切り上げリリーの様子を見る為に帰って来たり、母親は母親で日々のリリーの成長を日記に綴っていたくらいだったそうだ。
そして、お茶会デビューが出来るくらいの年齢まで成長すると、貴族令嬢としてのマナーを学び始めたが、休日には家族で散歩をしたり少し遠出をしたりもし、時にはワガママを言って使用人たちを困らせた事もあったが、楽しい日々を過ごしていた。
多分。この時までがリリーにとって一番楽しかった時期だろう。
しかし、そんな楽しい時間は「ある出来事」によってあっという間に終わりを告げた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「オギャァオギャァ!」
「――生まれたか!」
「はいっ! 元気な男の子でございます!」
「! そうか! 男か!」
そう、リリーに弟が生まれたのである――。
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