好きの先にあった、たったひとつの真実
- ★★★ Excellent!!!
十二歳の春。
それは、「好き」の意味も、「秘密」の重さもまだ知らなかった頃。
たぬきちのあだ名で呼ばれる少女・玉木吉乃は、転校生の神楽冷に目を奪われる。
まるでガラス細工のように透き通った肌、異国の月光を宿したような金髪と青い瞳。
けれど彼は、いつも一人きりで、そして決してマスクを外さない。
ただの好奇心だった。
彼の素顔が見たいだけだった。
だけど、神楽くんの優しさに触れ、笑顔に救われるたびに、
吉乃の中で何かが少しずつ形を変えていった。
それは友情じゃない。
きっと憧れでもない。
言葉にできない感情が、季節を巡るごとに静かに膨らんでいく。
虫取りの夏、補習の午後、ひんやりとした手の温度。
ただ一緒にいられるだけで嬉しかったあの時間たち。
そして卒業式の日、神楽から届いた一通の手紙。
「見せたいものがある」と書かれた言葉の真意は、
吉乃の一年間の想いを揺さぶり、すべてを変えてしまう。
あのとき、彼のマスクの下に何があったのか。
どうして「わたし」にだけ、それを見せてくれたのか。
これは、ひとつの問いと、ひとつの答えの物語。