好きの先にあった、たったひとつの真実

十二歳の春。
それは、「好き」の意味も、「秘密」の重さもまだ知らなかった頃。

たぬきちのあだ名で呼ばれる少女・玉木吉乃は、転校生の神楽冷に目を奪われる。
まるでガラス細工のように透き通った肌、異国の月光を宿したような金髪と青い瞳。
けれど彼は、いつも一人きりで、そして決してマスクを外さない。

ただの好奇心だった。
彼の素顔が見たいだけだった。

だけど、神楽くんの優しさに触れ、笑顔に救われるたびに、
吉乃の中で何かが少しずつ形を変えていった。

それは友情じゃない。
きっと憧れでもない。
言葉にできない感情が、季節を巡るごとに静かに膨らんでいく。

虫取りの夏、補習の午後、ひんやりとした手の温度。
ただ一緒にいられるだけで嬉しかったあの時間たち。

そして卒業式の日、神楽から届いた一通の手紙。
「見せたいものがある」と書かれた言葉の真意は、
吉乃の一年間の想いを揺さぶり、すべてを変えてしまう。

あのとき、彼のマスクの下に何があったのか。
どうして「わたし」にだけ、それを見せてくれたのか。

これは、ひとつの問いと、ひとつの答えの物語。

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