第6話 事情徴収



「…それが、先週から毎日毎日、床下から、ガタガタガタガタ音がして」



「ガタガタ…?なんだろうねぇ~?」



「一緒に住んでる人間の足音じゃないのか?」



「いえ、父も母もすでに他界して…私一人暮らしなので…。」



なるほど、独り暮らしでの物音は、お化けじゃなくても怖いかもしれないですね。



「それに、夜の12時…鳩時計が鳴るんですけれど…その時に鳴き声も聞こえるんです。」



「鳴き声ですか?」



「はい…『ひええええ…』とか、『こわいい…』とか…。」



「それは…逆にこっちが怖くなりますね。」



鳴き声というか、泣き声ですね…人の声のようにも感じますが…

でもお化けなのだとしたら、なくなったお父様やお母さまかと思ったのですが…そういうわけでもなさそう。


泥棒にしたって、怖いなんて言うはずないし…そもそも、どんなお化けなのかも不明。


たしかに、これはどの精霊をレンタルするか悩むのも仕方ない。



「そもそもこれ、精霊の能力で何とかなるのか?」



「先にお祓いしたほうがいいんじゃなぁい?」



それは精霊2匹も同じ結論に至ったようで、依頼者にそう尋ねました。

しかし依頼者は静かに首を横に振ります。



「一応霊媒師に相談もして、お祓いもしてもらったんです…でもおさまらなくて…もう手は尽くしたというか…」



なるほど、やるべきことはやったうえでのご相談というわけね。

まぁ、確かに実体のないものの対処は、魔力を持つ精霊に任せた方がいいというのは理にかなってます。



「でもぉ~、幽霊退治しようにもぉ~、相手の特徴わからないと難しくなぁい~?」



「確かに物音だけでは、対処法が判断しづらいですね…」



「他に何か起きた変なこととかないのぉ~?」



「今お話したので全てです。」



「えぇ~、もう終わりなのぉ~?」



「まぁ、しいて言うなら、毎日食料が減ってる気はするけど」



依頼主のその話で、全員がぴたりと体を止めます。

そうなると、お化けよりも別の可能性が出てきます。



「それお化けか?」



「ドロボーじゃないのぉ?」



「お化けは実態ないはずだから…物が触れるわけもないし…」



「でも、物音は一回の床下なんです。そんなところに人は隠れられませんし…鍵も壊されてないので、出入りできたとしても、この前花瓶割って作った小さな穴しか…」



「小さい穴なら、小動物かなんかじゃないのか?」



「なら、先に床下の調査じゃなぁい?」



「その可能性もあるんですけど…床下覗いても暗くて何も見えないし…一応親から譲り受けた財産ではあるので、家を傷つけたくはなくて…」



なるほど、だから実地調査には踏み切れてないと。

普通実地調査を先にやって小動物の可能性をつぶすのが先だけれど、まあそういう事情なら少しだけわかる気はする。



「とにかく、音が聞こえるのが寝室の下なので、うるさくて夜も寝られないんです!とにかく助けてもらえませか?」



「どうすんのご主人。」



依頼人の訴えを聞いたムーンが私にどうするか決断を仰ぎます。

まぁ、眉唾ではあるけれど、幽霊化動物のどちらかがいるのは確かで、依頼主の安眠が妨害されているのであれば、お手伝いしないわけにもいきません。



「まぁ…原因解明くらいはお手伝いしましょうか。」



「でもぉ、どの精霊がレンタル対象なのぉ…?」



そう、結局そこが問題。

相手の正体がわからない以上、どの精霊をレンタルしていいのかわからないし…そもそもそれを相談されてたのよね。


まぁ、でもこの場合は、あの対応をするしかないか。



「現地での実地調査次第で判断しましょう。」

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