第4話 能力目的のレンタル



「チワのやつ契約取れてよかったな。」



「ほんと、感慨深いよね。チワの願い叶うといいなぁ…」



私はチワたちが見えなくなったところで、ハンカチを振るのをやめ、そのハンカチを自分の目に当てました。


本日三回目の涙が、ほろりと零れ落ちたので、それをふき取るためです。



「でも…なんか寂しいね。」



「まだわかんないけどな、レンタル後里親契約になるかどうかは、この一週間にかかってるし。」



「もう…応援してるんだからそういうこと言わないでよ。感動モード台無しじゃん。」



「いつまでも感動してる時間はないんだよご主人。ほら、また別の契約希望者が来た。」



ムーンに言われて、振り返ると、今度はまた別の猫型精霊がやってきました。



「ご主人ご主人~」



「どうしたのクロエ。」



「契約希望者がきたんだけどぉ~」



「希望者?」



それならやることは決まっています。

さっきのチワのように、契約希望者と話をして契約書にサインをしてもらうだけです。


もう何度もやっていることなのに、わざわざそんな質問をしてくるクロエに疑問を抱きましたが、それについての質問は私の代わりにムーンがしてくれました



「だったらいつも通り、お互いで話し合えばいいじゃんか。わざわざ言いに来なくても…」



しかしクロエは首を横に振ります。



「そうじゃなくてぇ~。どの精霊が一番いいのかわからなくて相談したいんだってぇ~」



「相談?」




なるほど、育てたい目的のレンタルではなく、能力目当てのレンタルですか。


こういうことは、精霊をレンタルする稼業をやっている限りよくあるご依頼です。



「今度は能力目当てのレンタルか…そういうのはなんか覚めるんだよな。」



「こら、ムーンそういうこと言わないの。」



「だってさぁ…」



ムーンの言っていることはよくわかります。


真剣に精霊を育てたいと思っている里親ならともかく、能力目当てで利用する奴は許せないということなのでしょう。

しかし、こればかりは需要と供給の問題です。



「仕方ないじゃない、精霊じゃないと魔法使えないし、そういう便利能力がないと、解決しないこともあるんだよ。それに利用じゃなくて人助けだから。」



「人助けぇ~?」



それに、ここにいる精霊はギルドで飼われていたのに、捨てられた精霊もいる。

つまり、能力が高く、それなりの問題解決に対応することができるということ。


まぁ、この場合のレンタルは、どちらかというと前世で言う『何でも屋』が近い気がする。


さっきも言ったように、レンタル契約自体は精霊たちの同意のもとに



「そーだよぉ~それに、愛玩目的でもぉ~能力目的でもぉ~もらえるお金は変わらないしぃ~」



クロエ意外にがめついのね…いや、現実的なのか。

かわいい見た目に反してますが、かわいいと何でも許せてしまう不思議。



「どうする~?結構お困りみたいだったけどぉ~」



クロエはコテンと首を傾けて、私に再度そう尋ねました。


まぁ、ムーンは気に食わないみたいですが、こんな仕事していてダメってお断りするのはおかしいし、精霊をご所望される人たちの事情はそれぞれ。


必要に迫られているのであれば、精霊に同意を取ったうえで、精霊にひどい仕打ちさえしなければ、理由は何でもOKにしてますので、お断りする理由にはなりませんね。


まぁ、こういう時の交渉は、私がしないとダメですけど。



「わかりました、お話ししましょう。どのお客様ですか?」



私は話を持ってきたクロエに案内を頼みました。


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