第16話


着ている部屋着は、汗で濡れている。



気持ち悪い……



そう思いながら、立ち上がろうとして、点滴の針に気づいた。


シャワーを浴びるには、邪魔。


今は、シャワーを浴びて、着替えがしたい。


点滴の針を抜いて、肘を曲げ、着替えを持たずに、バスルームに入った。



あれは……夢じゃない……


あれは……私がなくした記憶だ。



なのに、ハッキリと思い出せない。


今までの私なら、気にしなかった。



悪夢を見ていただけだと、思い込んでいた。


だけど、それでは何も解決していない。と思う私が居るのは確か。



浴室に入り、シャワーコックを捻り、冷たい水を頭から浴びる。



所詮、琥珀と私は赤の他人のはず……?



私が此処から抜け出したとしても、心配なんてしない。


カゴの扉が開いていても、飛び立つ事が出来ない小鳥だって、気が変わる事もある。


そんな事を思いながら、冷たい水がお湯に切り替わったのが分かり、髪と身体を洗った。


浴室から出て、洗面台の前に立つ。


鏡に映るのは、私自身。


髪は、真っ黒なストレートロング。


色白の顔に、鼻は小鼻。


唇は、ほんの少しぷっくりとしていて、瞳は……赤い。


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