第39話 セリナVSリメル
王都に戻ってきた。
助けたとはいえ、相手は貴族こう言う場合は衛兵に預けるのが習わしだ。
衛兵に引き渡し、あとの事は任せる。
「それじゃ、あとの事はお願い致します」
「心得ました」
馬車ごと彼女達を預けてその場を去ろうとしたが……
「あの、ハデル様は恋人はいらっしゃいますか?」
助けたセリナちゃんからいきなり声を掛けられた。
「居ませんよ……生まれつき女性には縁がなくてね」
施設育ちだし、生きていくので精一杯だったからな。
「だったら、私と婚約を前提に……」
「ちょっと、ハデルは僕の仲間だから、色恋なんかする暇ないよ! ねぇハデ……」
「リメル様、その姿で言われても説得力ありませんわ! なんですの? 今迄は敬意を払い、敢えて言いませんでしたが、その恰好」
「僕の恰好がどうしたというの?」
「そのスカートの短さなんですの? 膝上30cmなんて破廉恥な」
「あっ、これ? 僕って凄く足が長いでしょう? だからこういうの履いているんだ! だけど、破廉恥は誤解だよ! ほらね」
そう言ってリメル様はスカートをぴらって捲ったんだけど……
「なにそれ」
「スパッツ パンツが見えないように履いているの。これなら僕自慢の足はしっかり見えるけど、下着は見えないじゃん。だから破廉恥じゃないよ」
「あっ、そうですか? それでリメル様は一体その足を誰に見せたいんですかねぇ~」
「うん? そんなのハデルに決まっているじゃないか?」
「あっ、そうですか? ですがハデル様はさっき恋人なんて居ないっていってましたわ」
「ああっ、確かにまだ恋人同士じゃないね。だけど、これから僕は長い時間を一緒に過ごすんだよ? そういう関係になるよ」
一体、なんの話をしているんだ。
「あら、まだ確定していない話ですわ! そんな汗くさい男っぽい女より、私みたいな女の子らしい子の方が好みに決まっていますわね」
「うぬぬっ、私より貧相な胸をしている癖に……」
「あら、私の胸はこれから大きくなりますわ。リメル様のようにもう決まった貧乳じゃないですもの。ええっ私の胸には夢と希望が詰っていますのよ?」
「あの、リメル様やめませんか?」
「ハデル……リメル!」
「あの、リメル止めましょうよ。みっともないですよ!」
「だって、この……」
「あらっ、どうやら家からの迎えが来たようですわね! それじゃハデル様、またね!」
そう言うとセリナちゃんは手を振って去っていった。
◆◆◆
「ふんっ! ハデルなんて知らない」
セリナちゃんが去ったあと何故かリメル様は凄く不機嫌だった。
「あの……僕、なにかしましたか?」
「知らないよ。あんなにデレデレして……」
セリナちゃんの事を言っているのだろうか?
「別にデレデレなんてしてないですよ?」
「そうかなぁ? 婚約とか言われて凄くデレデレしてたじゃない。鼻の下伸ばしてみっともないよ」
「別に伸ばして無いですよ。それにセリナちゃんどう見ても子供じゃないですか? 多分10歳位ですよね。本気で言っているわけじゃないですよ。僕がいた施設の子も良く言っていましたから……」
「はぁ~ハデルは分かってないね。確かにあの子は子供だけど貴族だよ! 貴族っていうのはそれこそ8歳で婚約なんて当たり前にするんだよ! 絶対に本気だって」
「そういうもんですか? ですが、どう考えても僕が好かれる要素なんて無いですよ」
「そう……ハデルがそう言うならいいや。 それじゃまだハウスに帰るには早いしなにか食べて帰ろうか?」
「いいですね」
リメル様も機嫌がなおったみたいだ。
うんうん良かった。
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