第4話 剣聖リメルの言い分
今の僕たちの評判は酷い物だ。
僕たちはただ使命に忠実なのに……クズだ最低だ!
そう皆が口を揃えていう。
国選の勇者パーティだから面と向かっては言って来ないが、ヒソヒソと陰口をたたかれる。
冒険者ギルドでも
『もう何人死なせていると思っているんですか? だれも希望の翼になんて入りたがりませんよ?』
そう言われ、なかなか次の人員が見つからない。
確かに、最初の頃は戦力としての仲間を求めたよ。
沢山の犠牲も出したし死人も出した。
それは本当の事だし、僕も認めるよ……
だけどさぁ、それって最初の契約の段階で説明して書類迄かわしているんだよね。
嘘を言っていたなら兎も角、最初から『危ない仕事で死ぬ事がある』そういう説明がされている。
それで死んだからって責任なんて取れないよ。
魔族との戦い、そして魔王を倒す事それが僕たちの仕事なんだから。
当然、僕だって死ぬ覚悟は出来ている。
命に上下は無いなんて言うけど、悪いけど僕たちには上下はある。
僕たちで言うなら、1番大切なのは勇者ライト、2番が聖女マリアンヌ、3番が賢者リリア、そして4番目が僕リメルだ。
そして4番目の下がその他のメンバーだ。
当たり前だよね?
本来の他の仲間の仕事は四職(勇者、聖女、賢者、剣聖)を出来るだけ無傷で魔王の前に立たせる事なんだからね。
僕たちを守りながら戦い命を懸けるのが仕事なんだから、誰か死ぬなら彼等になるのは当たり前だよ。
勿論、彼等の命で足りないなら次に死ぬのは僕だ。
僕の命で足りないなら次に死ぬのはリリアだ。
そしてその次に死ぬのはマリアンヌ。
勇者のライトが死ぬのは最後。
魔王を倒せる可能性は最後まで残さないといけない。
残酷かも知れないがこれが魔族と人類の戦い方。
魔王討伐に必要な犠牲なんだよ。
分かっていて仲間になったのに、家族や周りの人間もそれは周知の筈なのに……いざ犠牲が出たら僕たちが悪いなんて言い出す。
そしてライトがまるで何かしたような悪い噂を流されて、本当に最低だ.......
犠牲が出る度に悪い噂を流されて、途中からは戦闘要員の募集には誰も来なくなり、諦めて雑用係を雇う事にしたんだけど……
本当に馬鹿な奴しかこなかった。
僕たちに色目を使ってきて、馬鹿じゃないの?
こっちは命懸けなのに、口説いてくる様な人ばかり。
ライトが注意したら『僕たちがライトのハーレムパーティ』だと言いふらして逃げ出した奴迄いる。
結果、そのせいで、ますます僕たちの悪評が広まり……とうとう雑用まで雇う事が困難になった。
◆◆◆
もう長い事メンバー募集を掲示板に貼って貰っているけど、誰も応募してこない。
借りている部屋は汚くなるし、これから先レベルがあがり、深くダンジョンに潜る事を考えると、やはり雑用係兼サポートしてくれる人間が欲しい。
それに マリアンヌとリリアを守る人間が居ないと、ライトか僕が守らないとならないから攻撃力が減る。
そう考えたらどうしてももう1人は必要に思えるんだ。
だけど、評判が悪くなったせいか、欲しい1人がこない。
そんな状態が続いているなかようやく募集に応募が来た。
見た感じは平凡その物。
まぁ別にそれはどうでもいいよ。
ライトが『君がハデルくんだね? このパーティに参加するからには命を懸けて貰うよ!』
ちゃんとライトがそう告げた。
また揉めても嫌だからね。
そこだけはしっかり言わないと。
言っても揉めているんだから。
僕も『分かってないなら止めた方が良いと思うよ?』と釘を刺した。
ハデルという少年は何故か暗そうな表情で『はい』と答えた。
『なら、言う事は無い……明日から頼むよ! 言ったからには死に物狂いで頑張りな!』
と受け入れた。
当人がヤル気があるなら、それで良い。
命懸けの仕事だと分かって仲間になるなら反対なんてしない。
『そうだね、頑張って』
僕も激励したけど……
本当に大丈夫かな?
そう思える程になんだか元気が無い気がしたんだ。
まぁ、こんな命に係わる仕事をするんだ、元気が無いのは当たり前かな。
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