第一部 第一章「異世界で目覚めたら剣が振れてましたけど!?」
森で目覚めて、赤髪の美少女になっていて、目がやたらキラキラしてる。
そこまでは、まだ許容範囲だった。
「でもさすがに、これ振れるのおかしくない!?」
カナメは叫びながら、大木を真っ二つにした。
振っていたのは、錆ひとつない美しい剣――それも、両手に一本ずつ。光の反射で赤く輝くその刃は、彼女が見たどんな名刀よりも美しかった。重さはまるで感じない。というか、まるで身体が勝手に動くようだった。
「もしかして、これが……チート……?」
言ってみてから、自分で引いた。
状況整理がまるで追いつかない。さっき目を覚ましたときから、彼女の思考はずっと悲鳴を上げっぱなしだった。
ここは森。見渡す限り木々と緑。音も匂いも現実とはまるで違う。空気が濃い。身体も軽い気がする。
だけどそれ以上に問題なのは――
「剣術とかやったことないのに、なんでこんな自然に動けるの!?」
カナメはまるでアクション映画の主人公のように、剣を振り回しながら、木々の間を跳ね回っていた。跳ね回っていた……というより、跳んでいた。木の枝から枝へ、まるで忍者のように。
彼女は、自分の身体が「すでに戦いを知っている」かのように動くことに、恐怖すら感じていた。
「お、おかしいって……っていうか、誰か説明して~~~~~!!」
カナメの叫びが森に響いたが、返事はない。
代わりに、どこからともなく草の葉がざわめくような音がした。
(今……誰かの声が、聞こえた?)
いや、違う。耳にではない。もっと、脳の奥というか、感覚の奥のほうで――
そのとき、どこか遠くから声が風に乗って聞こえてきた。
「え、なに、悲鳴!?」
身体が勝手に、そちらへ向かって走り出す。
彼女の足取りには迷いがない。まるで自分じゃないような速さで、声に向かって駆けていく。
それが、セレスティアでの冒険のはじまりだった。
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