第2話

 次に目を覚ましたのは、どこかの草原だった。

 ……転生って言うくらいだから、赤ん坊にでもなるのかと思ってたけど、そういう訳じゃなかったんだな。

 

 体が軽い気がする。

 これは体が若返った? ……いや、シンプルに夢だからかな。

 まぁいいや。

 それより、どこに行けばいいんだろうな。

 夢の中だし、適当に歩けばいい感じにことが進むんだろうが、自称女神の俺がさっきテイムした少女にでも聞いてみるか。

 何となくだけど、テイムしたからか、感覚的に呼び出せる気がするんだよ。


「えーと、出てこい女神(?)」


 そう思い、俺がそう呟いた瞬間、金髪の綺麗な白い翼を生やした少女がどこからともなく現れた。

 

「あ、あ、あんた! な、なんてことしてくれたのよ!」


 自分の夢ながらにそのことにちょっとだけ感動していると、少女は怒ったように顔を赤くして俺に詰め寄ってきた。

 そしてそのまま、ブンブンと俺の体を揺らしてくる。

 ……ちょっとだけ痛い気がするのは気のせいか? ……まぁ、気のせいなんだろう。

 なんてったってこれは夢なんだからな。


「なんで、なんで、なんで私が下界なんかに……!」


 そう思っていると、少女は俺の体を揺らすのをやめ、今度は地面に項垂れ初めた。

 ……明らかに下界……地上を見下してるような発言だけど、なんか、可哀想になってくるな。

 いや、こいつをあそこから持ってきたのは俺なんだけど。


「しかも、しかも! テイム化されてるから、憎むに憎めないし! ……うぅぅぅ」


「どっちに歩いていったらいいと思う?」


 俺は少女のそんな様子を全て無視して、そう聞いた。

 もしもこれが夢の中の出来事じゃなかったとしたら、もう少し何か思うことがあったかもしれないけど、夢の中だしな。

 

「知らないわよ!」


 ……テイムされてるってくらいだし、もっと命令口調で言った方がいいのかな。

 単純に知らないだけって可能性もあるけど、仮にも女神を名乗ってたんだ。知らないってことは無いだろう。

 そもそも、夢の中の人物だしな。


「教えろ」


「あ、あんた、だ、誰に、向かって​──」


「ご主人様が教えろって命令してんだ、分かるな?」


 夢じゃなきゃ恥ずかしすぎて絶対に言えないセリフではあるけど、俺はそう言った。何度も言うけど、夢の中だしな。

 

「はぁぅっ、な、何……この、感じ……」


「おい、早く教えろ」


「んぁっ、お、おしえゆ、から、ち、ちょっと、だ、黙って……」


 その結果、少女はさっきみたいに顔を赤くしたまま、何故か体をくねらせていた。なんなら、翼もなんかピクピクさせていた。

 ……何やってるんだ? こいつ。


「あ、あっち、よ。あっちに行ったら、ご、ご主……あ、あんたの行きたいであろう街がある、から……」


 何かに耐えるように自分の体を押さえつけるようにして、少女はある方向に指をさしながらそう言ってきた。

 ……あれかな。

 プライドが高そうな感じだったし、本当は教えたくなんて無いんだけど、テイム化? されている影響で俺に命令をされたから、逆らえずに屈辱を感じている、みたいな感じなのか? ということは、やっぱり命令口調で言ったのは正解だったってことか。

 ま、教えて貰えたんだし、別になんでもいいか。

 夢が覚めるまで、せいぜい楽しませてもらおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る