テイマー転生〜一匹だけならどんな生物でも絶対にテイム可能らしいので女神をテイムしてみた〜

シャルねる

第1話

神谷流碧かみやるい、突然だけど、あなたは死んだわ」


 目が覚めるなり、突然白い翼を生やした金髪の可愛い美少女がそんなことを言ってきた。

 ……コスプレってやつかな。随分とリアルだな。


「その反応、信じてないわね?」


「まぁ、実際今、生きてると思うし」


「生きてないわよ」


 その言葉に、俺はぺたぺたと自分の体に手を当ててみるけど、生きていないとは思えなかった。

 なんなら、心臓もちゃんと動いてるし。


「まぁ、信じないのなら信じないのでもいいわ! 私は自分の仕事をこなすだけだもの」


「はぁ」


「いい? もう一度言うけど、あなたは死んだの。それで、私という美しい女神に拾われて、転生の機会を授かったの。分かった?」


「……全然」


 正直、本当に意味が分からなかった。

 俺はそもそも、自分が死んだとも思ってないし、目の前のこの少女が女神だと言うのも、微妙だ。

 いや、確かに可愛いとは思うけど、女神っていうのはもっと色々と大きくて美しいイメージがあるからさ。


「それじゃあ、スキルをあげるわね! どんなのがいいとか、希望はある? あるのなら、なるべく早くね」


 ……分かってないって言ってるのに、話が進められてる。

 と言うか、スキルって……一応、本当に死んでいる可能性を考えて、何か言っておくか?

 俺は全然自分が死んだだなんて思ってないけど、ここまで自信満々に言われたらちょっと心が揺らいでしまう。

 まさか、本当に俺は死んでいるのか……? と思ってしまう。


「えっと、じゃあ、テイマー、とかかな」


 転生と言えば、イメージ的にファンタジーな世界だし、もしも本当にそんな世界に転生するんだとしたら、俺は絶対に自分で戦うことなんてできないし、誰かに俺の代わりとして戦ってもらいたいと思い、そう言った。


「んー、まぁいいけど、テイマースキルってあんまり強くないわよ?」


「え、じゃあ……」


「まぁ、もう変えられないけど!」


 ……引っぱたいちゃダメかな。

 ダメか。少女相手にそんなことしたら、俺が犯罪で捕まってしまう。


 と言うか、今更なんだけど、これ、夢なんじゃないのか?

 そう思い、俺は頬っぺを思いっきり抓ってみた。

 その結果、全く痛みが無かった。

 なんだ、結局夢なのかよ。

 良かったのか、良くなかったのか……


「はいっ! これでどう? ちゃんとスキルは渡せた?」


【スキル、テイマーを獲得しました】


「頭の中で声が響いたな」


 もう夢だとは分かってるけど、目が覚めるまでは付き合ってやろうと思い、俺はそう言った。


「ん! なら成功ね。スキルもちゃんと渡したし、さっさとそこに落ちて転生しちゃってね」


 そう言って、目の前の翼の生えた少女は突然開いた真っ黒い穴を指さした。

 ……え、俺これに入るの? 一人で? 夢とはいえ、ちょっと怖いんだけど。


「……テイマースキルってどうやって使うんだ?」


「そんなの転生したら分かるわよ」


「教えてくれたっていいだろ?」


「……仕方ないわね。そいつを自分のものにしたい! って強く念じれば絶対テイムできるわよ。ま、一匹だけしかテイム出来ないから、テイムする相手は慎重に選んだ方がいいわよ。意味無いだろうけど」


 絶妙に腹の立つやつだな。

 ……俺の夢なんだけどさ。

 

 俺の夢、か。

 ……夢なんだから、こいつをテイム出来たりしないのかな。

 なんか、できる気がする。

 やってみるか。どうせ夢なんだし、楽しまないと。


「ちゃんと教えたんだから、早く行きなさいよね!」


 そう言いつつ、無視を払うように手でシッシッとやってくる。


(俺は、こいつを俺のものにしたい!)


「えっ? えっ? ちょ、ちょっと! ま、待って! あ、あんた! な、何してっ​──」


 そんな言葉と共に、女神を名乗っていた少女は俺の体の中に消えた。

 ……これ、好きに呼び出せるのかな。

 まぁいいか。

 取り敢えず、これで一人じゃなくたなったし、あの穴に落ちてみるか。……やっぱりまだ怖いけど、行かないと進まなそうだし。

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