透明な涙の星
誰かの何かだったもの
全ては管理下で
宇宙の果てにあるアセリア星は、感情を完全に制御された世界だった。
人々は感情を感じることが許されず、笑うことも泣くことも忘れ去っていた。
アリスはその中でただ一人、涙を流すことができた。
それは身体の異変のように始まり、誰にも見せられない秘密となった。
「なぜ私は泣けるの?」
問いかけるたび、誰も答えを持たなかった。
感情抑制システムの監視が厳しい中で、アリスの涙は“異物”とみなされ、やがて彼女は星から隔離された。
孤独の中で、彼女は記憶装置に触れ、星の真実を知る。
かつてこの星は、自由な感情で満ちていたが、ある大災厄により、感情の暴走が文明を破壊した。
生き残った科学者たちは、全ての感情を封じ込めるために感情制御装置を開発したのだ。
アリスの涙は、封じ込められなかった感情の残滓。
彼女の存在自体が、かつての星の“生きた証”だった。
そして、涙は彼女の孤独だけではなく、星の未来を変える鍵でもあった。
だが、アリスが自由に感情を持つことは許されない。
感情制御装置が再び起動し、アリスの涙は止められ、彼女は完全な無感情の存在へと変わっていく。
それでも、彼女の心の中には、消せない“記憶の涙”が輝いていた。
涙は透明で、誰にも見えなかったが、宇宙の闇の中でひっそりと輝き続けた。
そして、その輝きはいつか、星に新しい感情の風を吹き込むことを願って――。
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