第1話 卒業式の日

今日は小学校最後の一日。

卒業式の日。

みんな泣いてたなぁ。

特に女子。


でも、私たち6人は、終始笑顔。

卒業式は、単なる通過点。

それよりも、もっと重要なイベントが明日に控える。


初めて、子供たちだけで県外へ。

ネットで話題の、あの大仏様を見に、

仲良し6人でサイクリングに行くんだ。






帰る方向が同じ6人は、もうこれが最後の帰路となる通学路を行く。


「よーし!じゃあ、明日の打ち合わせするから。

学校から帰ったら、いつもの公園に集合な。」

言い出しっぺの雷人らいとくんは、人一倍張り切っている。


「お昼食べてからだから、1時でいい?」

かすみ 晴子はるこちゃんは、今日も元気で声が大きい。



◾️挿絵あり◾️ かすみ 晴子はるこちゃん◾️


https://kakuyomu.jp/users/moogot/news/16818622176583408186



「いいけど、忘れ物するなよ。

明日の持ち物チェックするんだからなぁ。」

学級委員だった武佐士むさしくんは、仕切り屋だ。


「僕、、、、さあ、、、、ちょっと、、、。」

孝太郎こうたろうくんがモジモジしている。


「何だよ!?孝太郎こうたろう!?どうした!?」

武佐士むさしくんは、言い方がちょっとキツイんだよネ。


「僕、今日午後は、母親とスマホショップ行くんだ。」


「おー!いよいよ孝太郎こうたろうもスマホデビューなんだ。」


「いいなぁ!晴子はるこは、高校生になってから、って言われているんだぁ。」

かすみちゃんのお家は、ちょっと厳しいのかな。


「無いと困るよなぁ。今時は友達付き合いもできなくなるかもよ。」

そう言いながら、雷人らいとくんは、

最新型とおぼしきスマホを、右手で掲げて見せびらかす。


「別に無ければ無いで、なんとかなるよ。」


「そうよねぇ、、!!って、武佐士むさしは、もう持ってるじゃん!」

かすみちゃんは、本当に悔しそう。

「ねぇ、誰か親を説得する、いい方法を考えてよ。」


「そう言う時こそ、GARMINIガミニにきいてみよう。」

スマホを操作する雷人らいとくん。


「ガ、ミ、ニ、って何?」


GARMINIガミちゃんだよ。最新のAIアプリ。

なんでも答えてくれるんだよ。」

あたしもすでにスマホ持ちで、ちょっと自慢げに答える。


「ホイ!答え出たよー。」

「イチ、親の不安を理解して、たい、さ、くを、、、する。

ねぇ、この漢字、なんて読むの?」


「て、い、あ、ん、だよ、提案!」

雷人らいとは、もっと国語の勉強してから出直してきな。

スマホ持つ資格なし!」


「ひぇぇぇ、お許しください、お姫様ぁ!」


「お姫様じゃないわ、そう、私はラブリーハルコ!

愛と正義の戦士、ラブリーハルコよ!」

なんか、変なポーズ決めてるかすみちゃん。

でも、かわいい。うらやましい。


「それ、カワイー!私にイラスト描かせて!」


「うん、莉奈りなちゃん、またかわいいキャラ描いてね。

中学からはこれでいこう、ラブリーハルコよ。」


「で、イチ、の次に、二番もあるの?」

武佐士むさしくんは、うまく話を戻そうとする。

ちゃんと周りを見ているんだね。

それに気付く私も偉いよね。


「えっと、ね、二はね、スマートフォンのメリットを伝える、だよ。」


「たとえば?」


「うんとね、連絡手段として、特に非常時に有効、だって。」


「そう、私、中学から電車通学になるから、

途中で何かあったら連絡しなさい、って、

それで買ってくれたの、ママが。」

そういえば、萌音もねちゃんは、私立の女子校に行くんだ。


「うちもね、ひとりで留守番している時に何かあったら困るからって。」

あたしは、おかあさんが職場復帰する時に、

スマホが与えられたんだった。


「だったら、あり得ないわ、晴子はるこは。」


「そうだよね。かすみちゃんにはスマホいらんわ。」

あっ、武佐士むさしくんも事情を知っているんだ。


「うちは、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでるから、

中学も徒歩5分だから。」

「みんなも小学校よりも近くなるんだよね。」

かすみちゃんは、そう言ったけれど、みんな一緒じゃないよ。


「、、、じゃあ、孝太郎こうたろうは、

スマホ手に入れたら、まず俺に連絡よこせよな。

明日の詳しくは、俺が知らせるよ。」


「ゴメンね、そうするよ。

ゴメンね、武佐士むさしくん、ありがとう。」

孝太郎こうたろうくん、

ありがとうは、ちゃんと目を見て言った方が良いよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る