第3話 カミールさんのお風呂に突撃

バイオレット「えっ…」

ローレン「うーん、土地勘はそうですけど、かといってこんな華奢なネコの女の子を…」

ミハエル「ネコの獣人の身体のしなやかさと、爪の力を侮るな。

     それに、道中何があるかわからん。

     君達、知恵の扉、どんな問題に引っ掛かってやり直しになった?」

ローレン「生け花とか女性物のジュエリーとか

     …あっ!」

ミハエル「なっ、パーティの顔触れには多様性があった方がいいだろう。

     加えて…体力は男の方があるのに、海女さんがなぜ女性ばかりか知っているか?」

3人「…わかりません」

ミハエル「女性は無理をし過ぎないから、溺死の危険が少ないのだ。

     君たちも感染症を根絶させようとご立派だが、今回の旅で命を失っては誰も得しない、まずかったら帰ってくるように。

     どうしても無理だと思ったら願いを変更してもいいからな」

3人「はいっ」

ミハエル様は意味ありげな目配せをした。

さすがエルフ王…気付いてたんだ!

ありがとうございます、と目配せを返す。

セレモニーの時は連絡先さえ聞けなかったけど

…今回いただいたチャンスを無駄にはいたしません!


カミール「エルフ王国の移動手段って馬車なんだね!」

ローレン「透明感のある緑色で、小さい羽が生えてて…綺麗だ、馬もオシャレだし」

バイオレット「魔力のぶん、人間界の車と同じぐらいの速度が出ますしね。

       御者は私がやります」

オットー「ありがとう、助かるよ!

     しかし、さすがエルフ王様のお気に入りだ、御者の心得まであるのかい」

馬車を飛ばすと、中から、やれ花が綺麗だー、ほんとにみんなエルフだー、という楽しそうな声が聞こえてきた。

ああ、今の人間にとっては、マスクもせずに堂々と外を歩けるってだけでも楽しいんだろうなあ。

こっちも楽しくなってくる。


暗くなったので宿屋に泊まる。

ローレン「エルフ王国もハミング王国と同じで、宿屋は2人1部屋なんだね」

お風呂に入って寝るにはちょっと早いので、片方の部屋に全員集まっておしゃべりすることにした。

オットー「あー、回復魔法を使っても、クイズ連発やら、ミハエル様に気を遣うやら、環境の大変化やらの疲れまでは取れないね。

     バイオレットさん、モフモフしてもいい?」

バイオレット「えっ、あっ、はい」

ローレン「僕も僕も!」

バイオレット「もちろんです!」

カミール「こらこら、一人ずつだぞ」


オットー「あー、ふわっふわ、癒されるー」

ひとしきり頭や背中を撫でられた後、

オットー「あっ、僕だけ気持ちよくなっても悪いよね」

首を撫でられた。

バイオレット「ゴロニャーン」

オットー「かわいい! 鳴き方がリアル!」

ローレン「そろそろ代わってよー」

オットー「はいはい」

な、なんだろう…

オットーさんと同じ所撫でられてるのに

…全身ほてっちゃう…

バイオレット「…あっ」

ローレン「ちょっ、ゴロニャーンじゃないの?

     そんな声出されちゃうと、その…」

ローレンさんは申し訳なさそうな表情になった。

バイオレット「あっ、気にしないでください、ネコと人間のツボが混じってて、自分でもよくわからないものでして」

カミール「ふうん…」

オットー「そうだよねえ、人間だって、自分のツボよくわからない人が大半だろうしねえ」


ローレン「じゃあ次、カミール、」

カミール「もういい時間じゃない?」

ローレン「あっ、たしかにそうだね、じゃあ部屋をどう分けようか?

     正直、僕はバイオレットさんとがいいんだけど」

えっ!

オットー「それはみんなそうでしょ!

     男達はみんなデカいぶん、バイオレットさんとだとベッドの広さがダンチになるし!」

まあ…そうだよね…

カミール「え、僕はそんな、」

ローレン「じゃあ順番だね、姫様護衛の時もそうだったし。最初はジャンケンかな」

じゃーんけーんぽん!

カミール「あ、よろしく…」

私…カミールさんに何か粗相したかな?

それとも、ベッドが広いよりも旧知の仲間同士の気安さがいい!ってことかな?


「お風呂が沸きましたよー。

 あっ、体毛が湯船に浮くと良くないんで、カミールさん先に入ってください」

「えっ、いいの? ありがとう!」


あれっ!

カミールさん、バスタオル忘れてる!

まあ、入って10分ぐらいだから脱衣所にはいないだろうし…

と思って持って行くと、脱衣所で足が滑った。

傾いた身体はお風呂のドアの方に

…って、なんでドアちょっと開いてんのーっ!

「わーーっ! 恥ずかしいーーっ!」

カミールさんは湯船に潜った。

「大丈夫です! 見えてない! 見えてない! 入浴剤の紅さで全然見えてませんからーーっ!」

バタン!


「すみません…」

「いやいや、バスタオル忘れた上に、のぼせやすいからってドアを少し開けておいた僕が悪い。

 …でも、体洗ってる時じゃなくてまだ良かったけど、やっぱり恥ずかしいなあ。

 もしローレンくんがダメだったら、婿入り前に裸見られちゃった責任とってもらおうかな? なんてね」

「…えっ!」

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