第2話 交換条件

「はーっ! やっとクリアしたー!

 何回もクイズ間違えて1からやり直しさせられて大変だったーっ!」

この黒髪外ハネヘアーの人は

…ギターのカミールさん。

「コーディさんと揉めてなかったら、クロードさんとルイスくんと6人で臨めたから楽だったのに、3と3に別れちゃったからねえ!」

この茶髪で、何故か今日はペンギンの衣を着て杖を持っている人は

…ドラムのオットーさん。

「ごめんごめん! 僕がコーディさんの真似して嫌われたせいだね!

 後々の為にも帰ったら謝り倒しておくよ!」

そしてこの眩しい金髪の彼は


…ローレンさんだ!

「…うそ」

思わず両手で顔を覆った。

「たしかにな、君達が3人だけでここまで来るほどの知恵者とは、お見それしました」

ミハエル様は私の感嘆を妙な風に解釈した。

「僕達は全員大学まで行ってるので!

 一度とは言えヒット曲を出した芸能人なので、高い物にだって色々と接してきましたし!」

そのローレンさんが胸を張った

…これって…運命?


ミハエル「さて、願いはなんですかな?」

カミール「そうそう、その為に死に物狂いで何回もトライしたんですから。

     僕達3人分の願いということでいいんで、感染症を根絶してくださいよ!

     人間界は外出自粛からの収入減で、ちらほら餓死者まで出てきている状態なんです!

     ルイスくんやクロードさん曰く、やはり治療系は悪魔や魔法使いではなくエルフの範疇、しかもパンデミックレベルとなるとミハエル様ほどの方でないと厳しいそうで!」

バイオレット「たしかに、オットーさんがお痩せになってる辺りに逼迫感が出てますね」

オットー「どこで実感してんのっ?!」

ミハエル「男前になったじゃないか」

オットー「この状態で留まるんならいいけど、このままじゃ男前なシャレコウベになっちまうよ?!」

ミハエル「うーむ、なんでも願いを叶えると言っておいて何なんだが」

ローレン「やはりそこまでは無理なのですか」

ミハエル「いや、できることはできる。

     だが、あまりに高域に魔力を使わなければならないので、根絶した後は一週間は寝込むことになる。

     当然、その間は国民の為には何もできない訳で、そうなれば国民は君達…どころか人間全体に恨みを持つかもしれない

     …どうしたものか…」

施政者も大変だ。

ミハエル「ーそうだっ!


    まずは君達が先にエルフ王国の為に働いてくれないか?」

カミール「えっ、それは望むところですけど…

     人間が、魔力を持つエルフのためにできることなんてあるのですか?」

ミハエル「エルフは、魔力に頼ってしまうからこそ、人間より力は弱めだ」

ローレン「そうなんですか? ミハエル様は鍛えててお強そうですけど」

オットー「そりゃ実力で国民のトップになるお人…じゃない、エルフは特別だろうよ!」

ミハエル「だが、たまに魔法は効かず、打撃か斬撃でしか倒せないモンスターが現れ、暴れる。

     そこで、人間の中でも体躯に恵まれていて、ヴァンパイア軍を倒して国を救ったローレン氏までもを擁する君達に、今暴れているトリニティという鎧のモンスターを倒してきて欲しいのだ」

ローレン「うーん、あの時はヴァンパイアのボブと小悪魔のルイスがいたし、姫様だって政治を学んでる人だから戦略に長けてたけど、人間の庶民だけで大丈夫かなあ」

オットー「僕達だって扉を突破した半年に一度の頭脳と体力のチームな訳だし、僕の僧侶の回復魔法もあるから大丈夫じゃない?」

それでステッキと…僧侶の衣なのか!

バイオレット「僧侶って人間なんですね、そういう種族かと思ってました!」

オットー「僧侶と魔法使いは人間が頑張ってなるんだよ、バンドが暇な時に副業として勉強してて良かったなあ」

カミール「えっと、僕は…

     魔法は何も使えないし、ローレンくんみたいにマイクで殴るだけで戦力になるほどの腕力もなくて…恥ずかしい!」

ミハエル「それでもギターを持ちながら動き回ったり飛び跳ねたりしていた辺り、エルフの平均よりは体力がありそうだ、斬撃が必要なこともあるだろうし、剣と鎧を貸そう」

カミール「ありがとうございます!」

カミールさんが銀の鎧と巨大な剣を携えるや否や旅立とうとする3人を、ミハエル様が呼び止めた。

ミハエル「待て待て、そう急くな。

     地図があるとはいえ、土地勘のある者がいた方がいいだろう。


     バイオレットを連れていきなさい」

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