第5話 ボブへの贖罪
ローレン「ただいまー」
夜中に働いたルイスと、服がないボブを街に行かせるのは酷なので、クマを売って服を買ってくるのはローレンの仕事になった。
ルイス「…ありがと」
ボブ「じゃ、早速着させてもらお…」
ボブがパンツ一丁になったその時、突然彼の体が後ろの茂みに吸い込まれていった。
慌てて覗き込むと、そこには18歳ぐらいの3匹のヴァンパイアがいた。
1匹はボブを後ろから羽交締めにし、残りの2匹は左右から抑え込みながらボブの血を吸っている。
ヴァンパイア赤「ラッキー、こいつ、30近い男の割には、血がうまいぞ」
ヴァンパイア青「裏切り者のくせに生意気ボディーだなー」
ボブ「うわああああ!」
ボブの顔が貧血でどんどん蒼ざめていく。
アナベル「ボブーーー!」
ヴァンパイア黄「はーっはっはっはっ。
お前さえ殺っちまえば、あとはニンゲンと、ヒョロガキ小悪魔なんだから、なーんも怖くねーんだよー」
ボブ「…3人で、逃げて…」
そんな。
そんなこと…
「できるかっ!」
見ると、ローレンがヴァンパイア青の頭をマイクで殴打し、
ルイスがヴァンパイア黄の背中に槍を突き刺していた。
ルイス「ほんとに、心臓を突く感じって、嫌だねえ…」
ローレン「頭殴る感じもね…
ヴァンパイアってこんなに人間みたいな感触するんだ。
でも、人間様をなめるなよー!
僕は、人間の上位種!
アイドル様だあー!」
ボブ「ありがとう!
相手1匹ならなんとかなる!」
赤「てめえ…馬鹿にすんなよ、この、ヴァンパイアの癖に人間の女とイチャコラすんのが大好きな変態ジジイ!」
ヴァンパイア赤はボブに拳を連打した。
右頬にも思いっきりぶつけたので、顔が思いっきり腫れ上がった。
赤「チマチマチマチマ色んな女から血を集めやがって!
ヴァンパイアたるもの、旨い血の女を見つけたら、相手が貧血になろうが死のうが、腹一杯になるまで血を吸わんかい!
もう二度とそんなせせこましいことできないように、その自慢の顔をボッコボコにしてやる!」
ヴァンパイア赤は、ボブに更なる打撃を与える為に大きく振りかぶった
…瞬間、ボディーがガラ空きになったのを、ボブは見逃さずに脇腹に噛みついた。
そのまま、形相が変形する勢いで、ヴァンパイア赤の血を吸い上げていく。
赤「ぐわああああ!」
ヴァンパイア赤は真っ青になって倒れた。
ボブの容態が酷いので、まっすぐ宿屋へ向かう。
宿場帳はローレンが書いた。
フランツ(35)
ピエール(31)
ヌリア(27)
モーリス(14)
足がつかないように、前回とは名前も年齢もずらしたようだけど…テルコって。
ボブの気持ち、今ならちょっとわかるかも。
アナベル「じゃあ、今日は私とボブね」
ボブ「…いや、俺は明日でいい、ルイスいっとけ。
姫様と寝るのは元気な時がいい、弱ってるとこ見られたくない…
同情されても辛いだけ…」
そんな。
こんな時こそ元気付けたいのに…
アナベル「違うわよ、ボブとじっくり話したいことがあるの。いいでしょ?」
ボブ「…? うん」
売店で売られていた消毒液や湿布で私に手当てをされながら、ボブはいつものように軽口を叩いた。
ボブ「あーあー、ひっどい顔! もうお婿に行けなーい。
しかも、見たあ?しょっぼい風呂! 庶民だってカップルでそこそこの金出せば宮廷みたいな風呂あるホテルに泊まれるのになあ!」
アナベル「…」
ボブ「なんだよ、いつもみたいに突っ込んでくださいよ。
やっぱり同情してんじゃないですか」
アナベル「同情じゃない…反省したのよ…
私、ボブが同族を裏切って人間側についてくれてることの意味を深く考えないで、酷いことばかり言ってた…
お詫びのしるしに、今日はなるべくたくさん血を分けてあげる…」
ボブ「えっ、いいんですか、正直助かります」
アナベル「あなたが元気じゃないと、私も困るしね」
ボブは昨日とは違い、ゆっくりと味わうように私の血を飲んだ。
そしてお風呂に入り、歌を歌い始めた。
♩死力を搾り尽くしても 残るのは苦い味
砂時計を裏返しても あの頃には戻れない
なんて甘く切ない響き。
そう言えば、ここはメロディ王国と言うぐらいだから、歌唱力は大きな武器なので、
最初に出会った5年前、ボブは私を虜にして血をもらうべく、歌を唄ってきたっけ。
でも、当時のボブは可愛らしい声をしてはいたものの、音程がフラフラしていたので、私は下手ね!と切り捨てたのだ。
すると、それきりボブは私の前で歌わなくなってしまったから、諦めたのかと思っていたけど
…物凄く練習してたんだ。
この歌詞、即席で作ったのかな…
本当に、ボブは一昨日までの平和な生活どころか、昨日までの健康体を永久に失い、戻れないかもしれない。
涙が出そうだ。
でも、ボブはもっと泣きたいのだ。
ボブと両手を繋いで眠った。
このまま治らなかったら、ボブはどんなに深く傷つき続けるだろう。
私のせいだ。
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