第4話 ローレンと同室っ?!

ひとしきり盛り上がった後、ボブとルイスは自分達の部屋へ。

ローレン「はー、やっぱり姫様と同室だと、広い感じしますねえ」

ローレンは元々長い手足を、更にぐぐぐっと伸ばした。

最初は癖の強い歌い方と謎の激しい動きにばかり気を取られていたけど、よくよく見ると本当に西洋の彫刻のような男だ。

長い金髪がよく似合っている。

『アイドルという人間より美しい種族だ』と言われて、ボブが信じたのもわかる気がする。

アナベル「ローレンは今までどんな暮らしをしていたの…?」

ローレン「カミール、オットーって仲間とバンドを組んで音楽活動ですよ。

     今日は一人で参りましたが」

アナベル「ああ、急遽あなたを呼んだんだものね…

   そりゃ、そんな急では全員揃わないわよねえ、歌も本領が発揮できなかったでしょうね

   …本当に申し訳ないことをしたわ」

ローレン「それなら、罪滅ぼしに、二人のことも取り立ててやってくださいね」

アナベル「もちろん。

     …ところで、カミールさんて彼女?」

ローレン「あははは、やだなあ、カミールは男ですよ」

アナベル「なんだあ!」

ローレン「なんです? 妬いちゃいました?

     姫様に妬かれるなんて、僕も捨てたもんじゃないなあ、光栄です」

アナベル「…べつにっ!」

ローレン「姫様こそ大丈夫ですか?」

アナベル「そうねえ…」

巻き込んだ張本人が弱音を吐く訳にはいかないけど。

アナベル「ねえ、ローレン…

     この生活ってどうしたら終わるのかしら」

ローレン「そうですねえ…

     ヴァンパイアだってボブのように、多人数からちょっとずつ血を貰ったり、動物や死者の血で妥協するのも沢山いますから、種族全滅まではしなくていいと思いますが。

     あれだけいた兵士たちが歯が立たないとなると、姫様狙いのヴァンパイアは結構な数いるものかと…」

アナベル「そいつらが全滅するまで、この生活が続くのね…

     身が冷えるわ」

ローレン「♩闇夜に囚われた氷姫!

     僕が温めましょう!」

アナベル「えっ…?」

ローレン「なに赤くなってるんですか?

     お風呂にお湯を入れてくるんですよ。お先にどうぞ」

アナベル「あっ、なあんだ」

ローレン「お湯が溜まるまでは、これをどうぞ」

アナベル「あっ、備え付けで紅茶パックとケトルがあったのね、ありがとう」

今までは紅茶パックなんて使ったことがなかった。

高い茶葉ばっかり並べて、あれがいい、これは嫌だ、と選り好みしていた。

お湯だってケトルではなく、高い鉄器で沸かしている。

でも、この紅茶は

…一番、五臓六腑に染み渡る。


「姫様、姫様、起きてください」

ローレンに揺すられて目が醒めたた。

アナベル「あ、おはよ…」

ローレン「僕も今、起きたんですけど

     …もうチェックアウト30分前ですよ?!」

アナベル「えっ!

   てことは、起こしに来ないボブとルイスはまだ寝てるのかしら」

ローレン「恐らく。

     まあ、一日であれだけのことがあったら、爆睡するのも必然ですけどね」


コンコン。

アナベル「ボブ、ルイス、おきてー

   …ダメだわ、物音一つ起きない」

ローレン「お任せくださーい!


     ♩闇夜に囚われた氷姫!

     僕が温めましょう!」


いつ聞いてもこの曲のインパクトは抜群だ。

すぐに部屋の中からドタドタっ!と足音が聞こえてきて、ドアが開いた。

「んあ〜、朝っぱらからなんだよローレン…」

んっ?

誰これ。

肩までのストレートヘアで、小動物的なおぼこい顔立ちの男の子。

部屋を間違えたのかしら。

いや、でも『ローレン』って言った。

魔力が溶けたルイスかしら。

でも、身長まで縮むものかしら…

というか、よく見たらルイスはベッドでもぞもぞしてるし。

と、いうことはー

アナベル「ボブ?!」

ボブ「うわっ、姫様にすっぴん見られた!

   最悪ー! もう生きていけなーい!」

アナベル「縁起でもないこと言わないの!

     というか、可愛いんだから恥ずかしがることないのに」

ボブ「わかってないなあ。

   例えばさあ、いくらパジャマが可愛くても、仕事やデートに着て行かないでしょ。

   俺にとっての化粧も同じ、外出用の服みたいなもの」

アナベル「なるほどね」

ボブ「それに、姫様には…

   可愛いよりもかっこいいとか、妖艶だと思われてたかった…」

アナベル「元々思ってないから安心なさい」

ボブ「あんまりだよぉ〜」


ローレン「さてと、朝ごはんどうしましょう」

ルイス「…これ」

ルイスが差し出した袋には、ザクロが沢山入っていた。

アナベル「ありがとう! これどうしたの?」

ルイス「…夜中抜け出して、ちょっと一っ飛びしてかき集めてきた」

ボブ「え? 飛べるの?」

ルイス「…少しなら」

ボブ「だったらその長い槍も使いこなせるんだし、狩りもさあ」

ルイス「…わかってる。

    ボブさんが返り血浴びてるの見て、反省した。

    返り血の度に服を新調することになったら、財布もまずいし」

ボブ「ならいっか」

アナベル•ローレン「いただきまーす」

ボブ「俺は食べられないけど…

   鮮血みたいな色で美味しそうだねー」

アナベル「やめてよー!」

生まれてこの方、栽培された果物以外食べたことなどないし、食べるまでもないと思っていた。

でも、この甘酸っぱさは、朝に刺激を与えてくれる。

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