第7話:国王対談
イサム達が城へとたどり着いてからは、トントン拍子に謁見が許され、二人は国王のいる玉座の前まで案内されていた。
その玉座には黒く長い髪とヒゲを持つ、温厚そうな男性が座り、二人を見つめていた。
「お目通りがかないまして、光栄に思います国王陛下。私、
「イサムと申します。一応、その、勇者としてこの世界に呼ばれたものです」
二人の自己紹介を受けて、悠然と構えていた国王が、静かに語りかけてきた。
「勇者殿、巫女殿、よくぞ無事にここまで来てくれた。東の果ての聖域のことは、斥候を通じて既に知っておる。本来なら救援に駆けつけるべきところを成せず、心の底から申し訳なく思う。本当にすまない」
そうして王冠を脱ぎながら立ち上がり、頭を下げる国王を見て、シアが慌てて声を上げた。
「そんな! 王様のせいではありません! あれはレッドドラゴンが——」
「巫女殿、そのレッドドラゴンの対策ができず、対空兵器や耐火装備などが準備できておらんかったのだ。なのに奴は空から我等を襲うという優位性を無視し、捨て身で巫女殿たちのいる聖域へと向かったのだ。我等が弱かったからこそ、そちらに矛先が向いたに違いない」
「それでも、です。王様、悪いのはブラックナイトと、その配下たちです。私達の身に起きたことで、ご自身を責めたりなさいませぬよう、どうか——」
言葉を続けようとしたものの、シアは口を動かせなくなってしまった。他者を責めるつもりは微塵もないが、やはり襲撃の事実は彼女に重くのしかかっていたのだ。
妙な気配を感じながらも、イサムは悲痛な雰囲気を必死に変えようとして、話題を切り替えた。
「お話中のところすみません、オレは勇者としてこの世界に呼ばれたものの、敵について知らないことばかりです。国王様、どうかブラックナイトとその配下とやらについえ、教えていただけないでしょうか」
イサムの言葉を聞いて、国王は姿勢を正し玉座へと戻り、説明を始めるのだった。
「突然の出来事だったのだ、ブラックナイトと名乗るものが現れたのは。そやつには三体の配下がおり、レッドドラゴン、グリーンデビル、ブルーメイジという。わかっている目的は神を超えるために世界を創り変えることだけで、その為に一度、世界を滅ぼそうとしているのではないかと予想している」
「なるほど。そのブラックナイトを倒せば、配下たちも大人しくなるのでしょうか」
「いや、おそらく逆だ。配下を全て倒さねばブラックナイトには対峙できぬだろう。理由はわからんが、奴は作戦を全て配下に任せて、身を隠し続けている」
「わかりました。では国王様、配下の居場所や能力、対策法は判明しておりますか?」
「まずレッドドラゴンだが、聖域を襲った後、足取りがわからなくなっているので兵たちに調査をさせている。奴の能力は、勇者殿と巫女殿が見た通りだ。次にグリーンデビルだが、格闘能力に長けた筋骨隆々の
「いえ、話していただけて助かりました。お陰で、自分が成すべきことが決まりましたので」
イサムは深呼吸をして、改めて国王を見つめ、抱えた疑問を一時的に殺しながら、はっきりと自身の決意を告げる。
「南のグリーンデビルの元へ案内していただけますか。オレが勝ってみせます」
必ず、と。そう口に出さずとも、その場にいる全員に伝わるほど、芯の強い言葉だった。
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