姪は猫になりたかった

@pls001b

姪は猫になりたかった


 私の家族は大の猫好きばかりだ。

 その中でも姪はかなりの猫好きだと思う。

 とにかく猫が好きなので、姪が買うものはすべて猫柄だし、飼っている猫に様々なお菓子やおもちゃを買ってきては構ってもらおうとする。

 まあ、家の猫はおやつはともかくおもちゃには見向きもしないけど。


 ある日のこと、私はそんな姪とある日猫を撫でながら話をしていた。

 

「まるちゃん大好きー。」


 姪はそんなことを言いながら、腹を見せながらゴロンとしている猫のまるちゃんのお腹に顔を埋めてクンカクンカしていた。今流行りの猫吸いである。

 なお、猫吸いは私が姪に教えたが、最初の頃は嫌がっていたまるちゃんも今では慣れたもので、「やれやれ、またか。」という様子で受け入れている。

 

「私猫が大好きだから、生まれ変わったら猫になりたい!」


 猫吸いを堪能しきった姪は、顔をお腹から離すとそんな世迷言を言い放った。来世は猫と聞いて、私はつい畜生道という言葉を思い浮かべたが、次に思ったのは猫になったら人間のような遊びは全くできなくなるだろうなということだった。

 とはいえ、姪の言葉はただのおふざけだ。なので、私もその遊びに付き合うことにした。

 

「来世が猫だというんだたら、勉強もしなくていいし学校にも行かなくていいよな。毎日が日曜日だ。」


「そうだよ!毎日遊んでおやつ食べて寝る生活だよ!」


「でも、ネズミやトカゲを捕まえたりしないといけないぞ。」


 私の言葉に姪の動きがぴたりと止まった。まるちゃんも他の多くの猫と同じで、小動物を捕まえては家に連れ帰ってくることが多々あった。特に姪に対しては、生きたネズミやトカゲを捕まえてはベッドの上に置くという、嫌がらせとしか思えない善意の押し付け(?)を数えきれないほどの回数行っていた。

 

「それに猫になったら、いま姪がやってる事を人間にされるということだぞ?」


 ついさっきまで、へそ天したまるちゃんのお腹に顔を埋めて幸せそうにしていた姪の顔は、一気に嫌そうな顔になった。自分がやられて嫌なことは他人にしてはいけません、という話は小学生の頃に散々聞かされるが、猫にしてはいけませんとは言われたことは私でもなかった。

 

「私、やっぱり猫になるのやめるわ…。」


 それ以降、姪が来世が云々という話をすることは一切なくなった。

 そして、姪は今日もまるちゃんのお腹に顔を埋めて猫吸いをするのだった。

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