第6話 『勝手に始まるヒロイン戦争』
翌日。俺は生徒会室で、山のような書類の仕分け作業をしていた。
神崎会長は、ノートパソコンを睨みながら文化祭の予算案をチェック中。
一方の奈々は、書類の分類を手伝っている……はずなんだけど、どうも視線がやたら刺さる。
(なんで目をそらさないんだよ、奈々……こえーよ)
「風間くん、これ。先週の企画書と形式違うわ。修正お願いできる?」
「あ、はい。了解っす」
「手伝おうか?風間の字、汚いから。読めなくなる前に直しておかないとね」
さらっと辛辣なこと言ってきたな、奈々。
でも、言いながら隣に座ってきて、さりげなく手伝ってくれるあたりが、やっぱり幼なじみらしい。
「藤崎さんって、風間くんのことになると本当に細かいのね」
「そうですか?まあ、昔から手がかかる奴なので」
奈々はさらっと毒を吐くけど、その言葉の裏にちょっとした優しさが混じってる。
それに対し、会長は微笑んだまま、さらりと反撃する。
「それは光栄ね。風間くんが“手をかけてもらえる価値のある人”ってことなのかしら?」
(やめろって!俺の知らないところでラブコメ合戦始めないで!?)
その後も――
「風間。背中、ほこりついてるわ。……ほら、じっとして」
「ん、ちょっと髪にプリント挟まってる。動かないで」
と、両サイドから同時に接近してきて、俺の顔の両側に美少女たちの顔が迫るという地獄みたいな天国が訪れる。
「(……これ、絶対あとで男子に刺されるやつじゃん……!)」
でも――奈々と会長の視線は、お互いに向けられたまま、全然俺のことなんて見ていなかった。
「風間くんって、ほんと、人気者ね」
「ね。ちょっと目を離すとすぐ誰かに持ってかれそうで怖いわ」
「……安心して。“誰か”には渡さないから」
何その謎の会話!?俺は家具か!?それとも賞品か!?
俺はひとり、静かに生徒会室の片隅で心の中だけで叫んだ。
(……平穏な高校生活、返して……!)
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