第4話 『フラグは立てるものではなく、勝手に生えるもの』
奈々の微笑みが去った後、俺の中には謎の罪悪感と混乱だけが残っていた。
(なんだよあれ……完全に、なんか察してたよな?)
そりゃまあ、生徒会長の神崎レイナと最近よく話すようになったのは事実だ。生徒会室で一緒に書類整理したり、放課後に文化祭の企画書をチェックしたり、時には二人きりになったりして――って、まずい。状況だけ見たら、絶対誤解されるパターンだ。
その日の放課後。俺は例によって、生徒会室で雑用係として働いていた。
「風間くん、プリントのコピーお願いできる?」
神崎会長――神崎レイナは、今日も相変わらず完璧だった。成績トップで運動神経抜群、しかも容姿端麗。そんな彼女から頼まれれば、断るという選択肢など俺には存在しない。
「了解です。コピー機壊れてなきゃいいけど……」
俺が資料を抱えて部屋を出ようとしたそのとき。
ガチャッ
「風間。ちょっといいかしら?」
再び現れたのは、藤崎奈々。
「な、奈々!?なんでここに――」
「なんでって、呼び出されたからよ。生徒会の新メンバーとして、ね?」
そう言って、奈々は不敵に笑った。
……え、まさか。
「お、おい、奈々……もしかして、お前も……生徒会に?」
「当然。あんたが入ったなら、私が入らない理由ないでしょ?」
奈々は俺の横を通り過ぎると、白雪会長に軽く会釈する。
「藤崎奈々です。これからお世話になります、生徒会長」
「こちらこそ。風間くんとは仲が良いのね?」
「ええ、幼なじみですから。誰よりも、彼のこと知ってます」
神崎会長が穏やかに笑い、奈々が対抗するように笑う。
ああ……また一つ、俺の平穏が遠ざかっていく――。
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