第2話 ◇世界中探したって、こんな不幸な奥さんっていないんじゃない

2


女のDMを受け取った日からの10日間を、私は夫に問い詰めることなく耐えた。


女からの告発という形での夫の裏切りを知ってから10日間が過ぎていた。


毎日、夫が会社から帰宅する度に……

休日になれば……

と、いつ不倫していることを問い詰めようかとそればかりを考えて過した10日間。


自分がきっぱりと滉星と別れるという決断ができなかったことから

問い詰めることができずにきたのだ。


それは、夫から『好きな女性ひとができたから、別れてほしい』という

最後通牒を言い渡されていないことも大きい。


不倫の関係なのにわざわざ私に不倫していることを連絡してきたぐらいだから

相手の女性は本気なのだろうと思う。


だけど、私に対して不満も女のことも何も言ってこない滉星の気持ちは?


今まで、どれだけ考えを巡らせても堂々巡りでこの先は、本人に訊いてみない

ことには分からない……ということ。


何度目かの堂々巡りで疲れ切った私は、週末の夜を決戦の日と決めた。


           ◇ ◇ ◇ ◇



夫の滉星が週末夜遅くに帰宅……翌日は祝日だった。


「ただいま~」


「お帰りなさい」


私は玄関に向けてお帰りの言葉を放つ。


「疲れたぁ~。風呂沸いてる?」


「うん、沸いてるよ」


「着替えを一度で済ませたいから風呂に入るわ」


そう言い置き寝巻と下着を持って夫は風呂場に向かった。


接待で食事を済ませて帰ってきた夫は、なんだかすごく疲れてるように見える。 


早く問いただしたいけれど今夜は話せないかな。


疑念だけが深まる中、何が真実なのか保留のまま悶々と明日迄の時間を

過ごすなんて……と考えるも、私はどこにも吐き出せない苦悩を抱えたまま

そのあとの時間を過ごすことになる。


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