第10話 【ネタバレ】戦が嫌だという気持ち
本当は、それに気が付いたパートが公開されるときに書きたいことなのですが、ちょうど沖縄終戦の時期であり、新鮮な気持ちのうちに記録しておきたいので、今書きます。したがって、多少のネタバレです。嫌な方は引き返してください。
『水の国、揺らぎの果てに未来を拓く軌跡の物語』は、国と国の諍いの話なので、平たく言うと戦争です。ちょうど今、開戦したい側とやめさせたい側の攻防そのものを描いているところなのですが、まさに主導している国の中枢のすぐ下の交渉や防備の実動部隊の動きを書いているときに、その立場の人たちが不安に押しつぶされたりうんざりしたりしてしまいました。
こちらはそういう気持ちを書くつもりはなかったので、おかしいな?と思っていたのですが、そのパートを書き終わって半日ぐらい経って、その気持ちは戦に巻き込まれた人々の本当の気持ちなんだ、と気が付きました。
戦後日本に生まれて、平和教育を受けていますし、例えば今放送中のNHKの朝ドラマ『あんぱん』
を見ていて、軍国主義を鼓舞する主人公の言動には嫌だな、と思います。いろいろな読書やドラマ鑑賞を通じて、戦争が嫌な気持ちをわかっているつもりでいました。
でもこれって、所詮体験していない人間が外から見た感想に過ぎなかったのだな、と気が付きました。虚構世界とは言え、生活の一コマを切り取って描写することで、一段深く体験したのだ、と。
特にドラマだと、わかりやすく反戦のヒーローやヒロインが出てきてドラマを盛り上げることが多く、それはそれで反戦メッセージが強くてわかりやすいですが、日常がすべてがそうじゃない。もやもやしたり、うっすら疑問を持ったり、そういう地味なマイナスな気持ちが揺らいで、なかでも正義感が強い人とかが立ち上がるのだなと、思いました。
読んでくださる方が、該当のパートを読んでも気が付かないことだと思います。でも、書いていて「そういうことなんだ!」と自分はとても腑に落ちました。
今まで、『滅びゆく運命の中で人はどうあらがうか』ということを、国が滅亡していく世界で、それを食い止めようとする国の中枢の人々の姿を通して描いていました。勢い、その中でもがくのは心から国の滅亡を止めたい、それと戦いたい、という人たちばかりでしたので、不安な気持ちやうんざりする気持ちは出てきようがなかったのだと思います。
今回は群像劇ということで、国の中枢の人だけではなくて、その中枢の下にいる人たちにもスポットを当てて、彼らの感情と同化して話を進めた結果、思ってもいなかった不安やうんざりする気持ち、というのを私が感じ取ったのだと思います。
群像劇はあまりよろしくはないとは言われます。特にWeb小説では感情移入のしやすい一人称、できれば主観で書いていく方が良いこともわかってます。自分の得意分野も実は一人称主観の語り口です。
でも、こんな風に「わかっているつもりだけど実はわかっていなかった」感情を掘り出してこれたことは、私にとっては大きな収穫でした。特に、戦が嫌だ、という気持ちが当たり前に思うのではなくて、生活の中での心の機微として納得できる体験に落とし込むことができたことは、非常に大きかったです。
この話が終わるまでに、どんな感情に当たれるのか、または掘っていけるのか、楽しみです。
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