お茶を

やってみる

第1話

ここでやってるのかな

建物の間にテントがあり、長机に椅子に5名ほどが座り受付をしている。

あ、あの人だ。真ん中で一人何か書いている。

視認してしまうと真っ直ぐに近寄れず、シートを引こうとしている人を手伝ったりするが、すぐに終わってしまう。

振り向かなくても存在がわかっている。

躊躇してはダメだ。


意を決して、あの人の前へ向かう。

まだ隣の人へ声をかけたくなる自分を無視して、あの人の前へ立つ。


「あの、"武士の野点"を一人お願いしたいのですが」

チラリとこちらを見ると、タブレットの画面をスライドさせる。

私の事は覚えていないんだろうな。


でも、目元に落ちかかる黒髪が素敵だ。ここぞと頭頂部を観察する。分け目から立ち上がる健康的な毛髪。あぁ、かきあげてみたい。


「こちらは16時以後しか空いてませんが、どうされますか」

ふと目線が合い、慌てて申し込む。

「17時で終了となりますので、時刻に遅れないようにお越しください」

「絶対に遅れません」

私は強く言った。






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