夢の果てに

「何人目だよ」


「八人目よ!」


 スピードとズズが署に遊びにきていた。


 あれから二人は結婚し、幸せな家庭を築いていた。


 子だくさんだ。仲のいい証拠だ。


「それにしてもでけー建物だな。金がかなりいっただろう?」


「まあね。しかし国が全面支援してくれた。一番最初に最も恐れられてたピースフルをつぶしたのが功を奏したんだ。あれから5年か。そちらは上手くやっているのか」


「おおよ。去年また世界大会で優勝して生徒数もうなぎ上りだ。で、高弟のトノイってやつに子供の部をまかせた。今現在生徒数は1380人くらいか。世界最大の空手道場になったよ」


「ズズも忙しいんじゃないのか?」


「まあね。でも張り合いがあるわ。いまね、私も空手始めたのよ。楽しいの。体を思い切り動かすのって。ゆくゆくは空手エクササイズの部を作るつもりなの」


 そこへマリアがお茶を持ってやってきた。


「久しぶりだな、マリアちゃん。元気にしてたか。相変わらずきれいだな」


 クロウが目を細めてマリアを見る。


「とにかく求婚者があとを絶たないんだよ。近いうちにいい相手が見つかるといいんだが」


 スピードがすかさず提案する。


「さっき言ったトノイを紹介しようか?腕は一流。給料もいいぞ」


「はっはっは。じゃあ今度お見合いさせよう」


 そこへ部下が手紙を持ってやってきた。


「なんだ?」


 クロウが封を開け読み始める。王様直々の書だ。


「何だって?」


「ふふ。『国家栄誉賞』を与えるだってよ」


「おお、よかったじゃないか」


「ああ、ロードのおかげだ。天国であいつも喜んでくれるだろう」


「ロードか。悲しい最後だったな」


「その碑が今の警察組織を支えている。さあ、仕事も終わったし、飲みにでも行くか。最高に美味いホルモン焼きの食堂へ案内しよう」


「いいね。ホルモンは大好物だ」


「あたしも」


 クロウが立ち上げた警察組織は今や世界中に広がり、世界が平和になりつつある。あれからおババが世界をまわり「ルーメン」の使い手を各国に派遣しているのだ。


 外に出て空を仰ぐクロウ。


 夢はかなった。


 マリアが横で微笑んでいる。


 困難に立ち向かった者だけが得る喜びを胸に、クロウ達は夜の街に消えていった。


 

 完

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劣等異能者クロウ 村岡真介 @gacelous

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