ロードよ永遠に眠れ

「この道の先にアジトがあるんだな」


 クロウが前を見ながら幹部のリンネイに聞く。


「ああ、踏み込むがいいさ。皆殺しだぜ」


 クロウがリンネイをぶっ飛ばす。


 ざわつく部下たち。異能者ではない者の方が多い。これから自らの死と向き合うのだ。


 そこで一人の少年がダッシュしてアジトの屋敷に向かう。ロードが素早くなわしろを飛ばし捕まえ首を絞める。


「殺すんじゃない」


「分かってる。しかしこんなガキを見張りに使うなんてよ」


 少年は気絶し、道の端に転がった。


「では昨日の作戦通りクロウ班とロード班に分かれてくれ」


 隊員達が二手に別れた。ロード班が先に動き屋敷の後ろを取り囲む。


 緊迫した時が流れる。頃合いを見定めクロウが玄関を開けた。


「動くな!警察だ。動く奴は容赦なく斬る!」


 場は大騒ぎになったが、うたげでもしてたのか皆ベロベロに酔っていて容易に逮捕できた。その数16名。


「どいつがギースだ!」


 クロウが叫ぶもリンネイは顔を横に振る。


「いねぇ」


 その時屋敷の裏手で絶叫が!


 クロウが勝手口から裏に出るとロードがうずくまっているではないか。しかも腹から大量の血を流しながら。


 クロウが駆け寄り肩を抱くも、このままでは失血死するのは間違いないように見えた。


「誰にやられたんた!」


 ロードがひたいから汗をたらしながら言う。


「分からねぇ。裏口から出ていった奴だとは思うが……」


「ロード、とにかく治療の異能を使え」


「俺の異能では自分を治せない。言っただろ、俺に異能は効かないって。……はぁはぁ……血が止まらない……くそっ!こんなところでおだぶつとは……」


「お前がいなくなると最強の異能者がいなくなる。警察が立ち行かなくなる。死ぬんじゃない!ロード!」


 クロウは泣きながらロードの手を握る。


「あと50年生きるはずだったじゃないか。念力でどうにかならないのか!」


 ロードはじっとクロウを見つめる。


「お前、俺の最期を予知できるか?」


「どういう事だ」


「俺の最期を予知できるのなら、予想通りになるということだ」


「予知か……」


 クロウが集中する。するとなんと短刀でロードの心臓を突き抜いている自分の姿が!


「どういう事だ」


 ロードが目をつぶり言葉を伝える。


「俺を殺せクロウ。そうすればお前はその予知の結果俺を殺した事になる……」


 クロウが涙ながらに叫ぶ。


「できる訳ない!そんな……そんな……」


 覚悟ができないクロウにロードが一喝する。


「殺せ、殺すんだ。お前の目の前にいるのはただの妖怪じゃない。三百人以上殺した殺人鬼だ。最初の死刑となるにふさわしい!」


 真剣なまなざしでクロウに迫るロード。 クロウの覚悟が決まった。


「お前は素晴らしい命の使い方をした。敬服する」


 翡翠色の目をつぶるロード。


「地獄で待っていてくれ……」


 ズブリッ!


 心臓を一突きだった。だんだん弱まっていくロード。 涙ながらにクロウが言う。


「お前のきれいな魂は水虎なんかには似合わない……今度生まれ変わるなら聖者に。安らかにな……」


 ガクリと力尽きたロード。


 ロードが、あの最強のロードが死んでしまった。


 小雨まじりの景色の中、安らかに眠るロードの横顔に手を合わせるクロウ。


「これでやっと安眠できるな」


 そのほほに触れる。


 クロウが身構える。そして叫ぶ。


「我はなしとげたー!」


 大きな声をあげるとロードの何百という異能がクロウに乗り移ってくる。その奔流はクロウの全身を駆け巡り、クロウがこの世で最も多くの異能を操る術師になった。


 あとから出てきた隊員にクロウが言う。


「ロードの身体は丁重に棺桶に入れて俺の帰りを待っていてくれ。ロードはおそらくギースに殺られた。俺はこれからギースを追う。お前たちはここの幹部らを署に連行して取り調べをしててくれ」


「署長は一人で行くのですか?」


 クロウは裏庭の小さな馬小屋を指さす。


「あれで行く。一人で行くしかあるまい」


 小屋に一頭繋がれていた馬を引き、乗り込むクロウ。


(奴は北北西に向かっている。北の国ライカスに向かっているのは間違いない)


 馬の腹を蹴り、出陣する。


 全てにケリをつけるために。





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