開所式

「えー本日はお日柄もよく、無事警察署を立ち上げる事ができました。ひとえに皆様方の御尽力あればこそでございます。我ら警察官一同命をなげうってでもこの国の安全、安心を保障いたしたく存じます」


 警察署の開所式がはじまった。そのパーティーには様々な者が迎えられた。


 保安担当大臣、治安維持庁長官、元老院の貴族達、王に連なる者。


 一見華やかな式の裏で、ある者達が列席していた。周りをねめ回すように睨んでいる一行。クロウはピースフルの奴等だとカンで分かった。


 ツカツカとそいつらのところに行き警告する。


「お前らはピースフルの奴らだな。この警察署は国の承認を得た。お前らの居場所はもうない。おとなしく帰るんだ」


「なんだとー、お前名を何という」


「署長のホアンゲンジョウだ。この式が終われば、いの一番に手掛けるのがピースフル壊滅作戦だ。上の者にそう伝えておくんだな」


 そいつらは帰って行った。   


「ねーお兄ちゃん、お菓子ほしいの」


 マリアがクロウにお菓子をねだる。無垢なその心は生前の頃と変わらない。


「よし、もっとたのんでこよう」


 クロウは部下の一人に菓子屋に追加注文を出しに行かせた。


 副署長になったロードは子供たち全員を連れてきていた。


「クロウ、菓子はもうないのか」


「さっき追加注文をだしたよ。それよりピースフルの奴らこれから警察の面々を襲ってくるのは間違いない。その前に俺たちは動き出そう。この式が終わり次第、捜査開始だ」


「了解した。奴らが群れている場所は分かるのか?」


 クロウがカンを働かせる。


「ああ、『ハッピープレイス』という飲み屋だ。ここにたむろしている奴らをまずは全員捕まえる。取り締まりをしてピースフルの全貌を暴き出す。お前はその人間の過去が見えるんだったよな。一人でも殺しをしているのは死刑だ。ギャングの者たちを血祭りにあげて悪党どもを恐怖のどん底に叩き落としてやる!」


 ロードが難しい顔をして切り返す。


「裁判という手順を踏まないのか?」


「教えてもらってはいない。お前の過去を見る異能で十分だ」


 式は元老院の議長の挨拶になった。それを無事終え、解散となった。


 列席している客一人ひとりに頭を下げるクロウ。


 これからすぐにピースフルの捜査が始まる。


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